明けぬ空に、君を想う


「お兄様。」


兄はいつもの笑みが消えそうな、真顔に近い顔をしていた。


「あの、ありがとうございました。異能、使えるようになったのも、、、」

「もしかして、使えるようになったことで舞い上がっているの?」


私の言葉に、兄は一言放つ。

次の言葉を探しているうちに、兄は続けた。


「確かに、心灯の異能の力は大きい。一族にとっても、もしかしたらいい方向にいくのかもしれない。だけど、忘れてない?君が使えた源は、陽真君でしょ?」

「それは、、、」


私は詰まった。
俯いてしまった。


「彼を救いたいから、そんな事をずっと言っていたね。それを知った時の一族の反応、考えたことなかった?」


確かに、敵対一族のために使ったなんて言えない。
今以上に、良くない方向へと行ってしまう。


「俺は別に、一族に悪影響にならない方が良いんだから、何も言うつもりはない。」


兄は小さくため息をつく。


「異能自体を隠すのか、一条家との繋がりを隠すのかは自分の辻褄が合いやすい方で決めることだね。」

「、、、はい。」


そう返事をすることで精一杯だ。

兄の顔を見上げた時、笑みの影も消えた。
そして一言、私に言った。


「一族があるためにできること、考えたことあった?」

「え、、、」

「なさそうだよね。何も考えないで過ごしてきてたんでし
ょ。」


私は、それがとても深いところまで突き刺さった。
やっぱり、兄はよく見ている。


「だから自分の行動に責任も持てない。今のお前には説得力もないままだ。」

「、、、その通りです。家のために、生きていこうとは、どうしても思えなかったんです。」

「それは感覚?それとも、腹いせ?」

「どっちもです。」


一族からの扱いがあったから、貢献したいだなんて思わなかった。
そもそも、自分が思う通りに生きてみたいと思ってしまう。
そうゆう所も、良くなかったのかもしれない。

兄は、それを聞いて一言。
冷たく言った。


「お気楽だね。」

「、、、申し訳ございません。」


ーーまた、これしか言えないなんて。


「俺はもう行く。お前は人を避難させきったら家に戻ったほうが良いんじゃない?」


そう言って、背を向けて、歩き出してしまった。

兄が呆れる理由が、分かってきた。
前までの私は、やっぱり分かった気になっていただけだった。

家のために生きようとする兄と、自分勝手な私。
容姿も頭脳も異能も持った力のある兄と、全て劣る私。

兄にとっての私、それは、あまり良い存在ではない。
分かっている。

ーーそれでも、、、


「昴お兄ちゃん!」


兄は驚いたように、足を止めた。

私は、本当の水無瀬昴を知らない。
何を思っているのかは分からない。

何とも思っていないかもしれない。
だけど、もしかしたら自分の感情を必死に隠していただけで、あるのかもしれない。


「私、もっと人を救えるようになります。もっと周りを見ます。できることをするために、努力します。だから、、、」

「何?」


兄は振り向かないまま答えた。
私は続けた。


「私が、役に立てるようになったら、一族を説得できたら、私を認めてくれますか、、、?」


私の中には、どうしても昔の兄がいる。
もし今も、その気持ちが少しでも残っているのならと期待をしてしまっている自分がいた。


ーーまだ、この人に認めて欲しいって思っちゃうんだ、、、


兄は、一瞬固まった。

そして少しだけ、こちらを向いた。

でも、その視線をずらして呟いた。


「、、、さあな。」


一言、呟いて行ってしまった。

その背中を、私はずっと見ていた。