陽真の息は上がってる。
「陽真。」
私は近づいた。
その時、喪月が何かをしている。
「小夜、気をつけて。」
「うん、、、」
陽真の横で、その動きを確かめた。
最後の力で攻撃をためていたのだ。
「俺が、、、こんな奴らに、、、」
体は完全には崩れていない。
その時、陽真が口に出した。
「喪月。」
「お前たち人間のせいなんだ!全部狂ったんだ!」
その声には、怒りを感じた。
ーー喪月の、過去、、、
私は、何も知らない。
だけど感じた。
底知れないほどの憎しみを。
そして、私たちを見てはっきりと言った。
「守るだなんて、笑わせるな。そんな綺麗事を言っている奴ほど信用ならないんだ!」
強く、怒鳴った。
私たちは、一瞬固まってしまった。
「人間はすぐに嘘をつく。所詮は口だけの生き物だ。本気でそう思っているのなら、人間を知らなすぎる。」
喪月の言葉は、重みを感じる。
何も言えない私たちに、喪月は絞り出すように言った。
「俺を裏切り、全部奪ったのも人間だ、、、俺以外の中位空亡も!上位空亡も!」
「あなたは、、、自分が奪われた分、奪おうと思ったの?」
「だまれ!」
思わず声に出た言葉に、喪月は更に怒る。
そんなことは分からない。
少なくとも、1000年以上続く争いの種はある。
そして人間から空亡となった存在は、よっぽどの恨みがあったんだと思う。
ーーでも、、、
その時、陽真が声に出した。
「確かに人間は、見栄を張るし嘘もつく。くだらないプライドがあるんだ。そして、口だけなら何とでも言える。たくさん傷つける。そういう生き物だ。」
「陽真、、、」
「言葉も力の使い方も、間違えてばっかだ。裏切る人がいて、争う人がいて、、、」
ーー人は、確かに綺麗な存在じゃない、、、
「分かっているのに、ずっと変わらないじゃないか!俺が人間だった時の奴らと同じだ!」
喪月は怒る。
でも、陽真は答えた。
「自分が傷ついたら、傷つけていいの?」
「ーー」
「そのせいで、今も争いが続いてる。みんな空亡を恨んでいる。」
「それは、、、」
「みんな、自分たちが苦しんだみたいに痛めつければ満足なの?」
陽真は言い切ったあと、目をそらした。
そして言葉にした。
「でも、、、俺たちも同じだね。空亡から人を守るために、空亡を倒す。そうしなくちゃ自分たちがやられるから。」
「そうだね、、、結局、そうやってきて千年。何も変わらなかったんだよね。」
私も、陽真の言葉に続いた。
喪月は、何も言わない。
ただひたすらに、その攻撃を溜め続ける。
その時、陽真は決意したような表情になった。
「俺は、この争いを終わりにしたい。」
「ーー」
私と喪月は、同時に陽真を見た。
「話あいで通じないなら、もっと強くなって、上位空亡と戦う。」
そして、私を見た。
ーー本気だ。
そう伝わる目だった。
そして、今度は優しく微笑んだ。
「影に蝕まれる世界じゃ、本当の意味では守れない。救えないからね。」
それはこの瞬間も、陽真は私を想っていると言っていると分かった。
今度は喪月に向き直る。
「もっと確かめなきゃ駄目みたいだ。人間と、空亡について知ろうと思う。そして、いつかきっと、、、」
「そんなの、信じられるか、、、」
喪月は遮る。
けれど、乱れた表情だった。
そして、それを振り払うかのように、もう崩れる瞬間の手で術を使おうとする。
陽真は身構えた。
私は思った。
ーー喪月は、このまま恨んで消えていくのだろうか、、、
「確かに、あなたに罪はある、、、それでも、、、」
本当に小さく、呟いてしまった。
喪月を見る。
私は、喪月に何も言えない。過去に何があったのか知らない。救うことは出来ない。
ーーそれでも、、、あなたが安らかに眠れることを、祈ってる。
心の中で感じていた。
その時、喪月は術を使う手を下ろした。
陽真も私も、目を見開いた。
喪月は、何かを感じ取ったような顔になる。
そのまま何も言わずに、消え去っていった。

