その時、目の前に水の舞が広がった。
「これ、、、」
その技の出所を見た。
「お兄様、、、」
兄が防御をした。
「な、なぜお前がここに!」
喪月が動揺している。
兄はいつもの、余裕を見せるような笑みを浮かべている。
「中心部で、今頃騒ぎが起こっているだろ!」
「そうだな。お前達のせいで下位だけでなく、中位空亡まで暴れている。」
その言葉に、私も思わず口に出た。
「中心部も!?」
兄は言った。
「ああそうだ。今軍も力ある異能者達が皆そっちへ行っているんだよ。残念ながらお前も切り捨てるべきだったんだけど、流石に街人が多すぎたし、完全に見捨てる訳にもいかないんだよね。」
兄らしい、つまり一時的に抜けてきたそうだ。
「なるほど。」
喪月は落ち着きを取り戻し、また笑った。
「今は一条あたりが率いているな。お前はそいつの弟の助けも引き受けたわけか。」
「まあそうだね。だけど長居をするつもりはない。向こうも人手が足りてないんだ。」
「そうだろうな。だが、俺もお前一人では倒せん。」
その言葉に、兄の笑みは徐々に消えていく。
「何でそう思う?」
「俺も威力を上げているんだ。中位空亡の中でもずば抜けている。」
「それで、俺より強いと?」
「いや、確かにお前の方が強いかもな。だが、俺は交わし術も逃げ術も持っている。現に、お前から逃げれた訳だからな。」
「そうだったな。俺は長居できないから時間稼ぎってわけね。」
兄は、理解したような顔になった。
そして、私たちの方を向いた。
「なるほどね。こいつが戦闘不能だと都合が悪い。」
そう呟いた。
私は、思わず口に出した。
兄に聞いても仕方のないとわかっていながら。
「陽真が、、、心灯を使ったのに、まだ苦しんでて!」
兄はため息をつく。
「そうみたいだね。だけど、もっと考えなくちゃ。」
「え、、、?」
「空亡の攻撃、術は心に関わる全てに影響を出す。」
そういえば、本にも載っていた。
だけど、その意味がわからない。
「分からない?記憶だけじゃないんだよ。感情も、単純じゃない。」
「そ、それは、、、」
ーー陽真の中にある深い何かが、影響しているってこと?
その答えは、喪月の口から知った。
「その通り。一条陽真がそのままなのは、本人自身が苦しめているからだ。」
「陽真が、、、?」
考えている私に対し、兄が言った。
「時間がないんだ。お前が何とかしろ、心灯の異能者。」
「で、でもどうやって、、、?」
「心灯の力が分かるか?」
「え、、、?」
兄の言葉に、戸惑ってしまう。
兄は続けた。
「本当に理解していないな。心という文字が入っている。つまり空亡のように、心という幅広いものを扱える。暗闇の中に光を想像するように、その想像の中に入ることもできる。」
「それって、、、」
「相手を理解し、心を接続させる。」
ーー陽真の心の中に、入れるってこと、、、?
「だけど、入り方も分からないです、、、!」
「だから!」
兄は強く言った。
「自分で考えろって。心灯において、何が一番大切なのか、分かったんじゃないのか?」
今度は静かに言った。
私は考えた。
そして、思い出した。
「相手を、見ること、、、知ること、、、想像すること、、、」
何かが解けていく感覚がした。
兄は言った。
「時間がない。早くしろ。」
「はい!」
ーーごめん、、、陽真。
陽真の手を握った。
そして目を瞑る。
私は、陽真という人を考えた。
その心を、想像してゆく。

