家の中庭はいくつかある。
その中で、最も小さい場所を密かに使っていた。
半分ほど屋根のある場所で、雨でも居やすい。
ーー心、、、心、、、
頭の中の暗さに、微かな光がつきそうなのに、つかないまま。
開きそうで開かない扉のよう。
「駄目だ、、、」
私は今、異能の練習をしていた。
一度も使えたことのない異能だけど、頭の中に光が浮かべば使うことができる。
直感でも本でも分かっていることだった。
ーーだけど、、、
光なんて、浮かばない。
「どうしてできないんだろう、、、」
また一人、呟いてしまった。
何年もやってできなかったことが、急にできるわけがない。
それでもやらなくちゃいけなかった。
ーー力は、説得力。
信頼も、期待も、それによって変わる。
きっと力がなければ、何一つ認めてもらえないまま。
ーーいや、それ以上に、、、
「何もできなかった、、、」
誰かを守ることも、救うこともできない。
力になることができなければ、助けられない。
陽真の表情も、声も忘れられない。
空を見上げた。
薄暗い空だった。
何となく、屋根のある部分から外れた。
ーー冷たい、、、
「何をしてる?」
「え!?」
声の方を振り返ると、兄が立っていた。
いつもの笑みはなく、真顔で私を見ていた。
「お兄様、、、その、、、」
「修行でもしているのか?」
口調が強い。
その声は、あの日立ち去る時くらいに、作らない声だった。
低く冷たく、怒りを感じる。
一瞬で当てられたことに戸惑いつつも、返す言葉を探していた。
「無意味だな。」
一言、私に言ってきた。
「それは、、、」
「あいつのためか?」
「え、、、」
痛いところをついてきた。
兄は、目を逸らしてため息をついた。
苦い笑みが見えた。
「あの一件があってもまだ分からないのか。どうせ、認めてもらいたいとかいう願望からだろ。無駄なことだ。」
「、、、」
「使い方にもっと必要なことがあったら?お前の頭も中の力も足りない。がむしゃらに同じことを繰り返して、時間の無駄だな。」
その言葉を聞いた瞬間、何かが切れるような、溢れるような感覚がした。
「分かっています!そんなことずっと分かってますよ!」
兄に向かって、つい言ってしまった。
驚いたような表情の兄だったけど、私は止まれなかった。
「どうして使えないのか、何が足りないのか探しています、、、それ自体は分かっていません、、、それでも、何としてでも使えるようにならなくちゃいけないんです!救いたいんです、、、!」
今までの情景が浮かぶ。
何もできない自分を。
それでも陽真は、守ってくれたこと。
「私は、悔しかったんです、、、何もできなくて、、、いつもそうです。ただ見ているしかできなかった自分が惨めで、、、情けないんです、、、」
「ーー無理だな。」
兄は冷たく言った。
「情だけで何でもできると思ってるなら大間違いだよ。少なくとも今のままじゃ、ずっと繰り返しだ。」
言葉が詰まった。
分かっている。
ずっと、分かっていた。
いや、分かっていなかったのかもしれない。
頭の中は、異能のこと。
それ以上に、陽真のことで埋め尽くされていた。
ーーどうしたらいいの、、、?
どうすることもできなくて、立ち尽くしていた。
気がついた時、兄の姿はなかった。

