秋雨が降る夕方。
喫茶店の窓からそれを眺めていた。
空いた席、そこに陽真がいないことが胸を締めた。
「大丈夫ですか?」
「え?」
店主が心配そうに話しかけてくれていた。
「ええ、大丈夫です、、、」
私の顔を見た店主は、ふっと笑みを浮かべた。
そして一つ、私のテーブルに置いた。
「あ、あのこれ、、、」
「試作中なので良ければ。プリンというんですよ。」
ーー気をつかってくれてる。
「ありがとうございます。」
「いいえ。」
甘さが、思っていたよりも優しかった。
それが少し、苦かった。
ありがたく頂いた後、店を出た。
外は少し冷たい空気と水気がある。
傘をさして歩き始めた。
雨音が、やけに大きく聞こえる。
会話がない分、余計にそう感じるのかもしれない。
中位空亡の喪月、私と陽真の兄、あの件から少し時が経った。
陽真とは一度も会っていなかった。
喫茶店には顔を出さず、街でも森でも見かけることはなかった。
元の日常に戻ったという言い方も出来るけど、それ以上だった。
もう、あの時間が戻らない。
その事実が、胸を締め付ける。

