「暑いな、、、」
本格的な夏の暑さを感じる。
風さえ生ぬるい。
今日は特にすることもないので出かけることにした。
行き先は喫茶店。
空の青さ、風も吹く。
いつの間にか喫茶店に来ていた。
ガラガラとした店内に、陽真を見つけた。
いつもの制服ではなく、薄布の和服だ。
すぐに気づき、笑顔を向ける。
「小夜ー。」
「陽真。」
本を読んでいた。
その横には勉強道具。
ーー多分、さっきまでやってたんだろうな。
「小夜。今日は家のこととか課題は大丈夫?」
「うん。前半の方に課題は終わらせたし、家のことも減ってきたから。」
「そっか。良かった。」
陽真は私の状況をこまめに聞いてくれる。
本音を言うと、陽真と早く会いたくて、頑張ったのもあった。
これで会う回数を増やせる。
「そうそう。この本、凄くいいね。特に最後の展開が。」
「だよね。最後、私もそこが本当に印象的で。」
私と陽真は、色んな不安な気持ちをどこかに置いてきている。
こうして話しているうちは、何も気にしないように。
喫茶店だけではなく、川、森を歩いたり、座ったり、遊んだり。
少し、涼しく感じる瞬間もあって。
「気持ちい風。」
「うん。涼風だね。」
コーヒーを飲んで、ラムネを飲んで。
ちなみにラムネの味が気に入った私は、喫茶店で炭酸系も頼むようになった。
陽真もよく、同じ物を頼む。
「今日は、メロンソーダかな。」
「良いじゃん。俺もそれにする。」
そんな会話をしていると、店主が微笑ましく笑い、声をかけてきた。
「お二人。色んなものを頼むようになりましたね。」
その言葉に、陽真と顔を合わせる。
そして、陽真は口を開いた。
「この店のコーヒーが美味しいからって言うのが大きいですけど、、、」
そして考えるような表情をしながら続ける。
「俺は多分、背伸びしてたんです。苦くて、それが慣れる頃には、大人になれるんじゃないかって、期待していたんです。」
ーー陽真、、、
何だか深くて、思わず見てしまった。
少しだけ、切ない表情だった。
「そうですか。お嬢さんは?」
「私は、多分陽真と同じです。それから、前は冒険しようと思わなかったんです。」
「そうですか。」
陽真と私の言葉に、店主は頷く。
そして、話してくれた。
大人として、そう言いながら。
「分かるさ、気持ちは。でも、二人ともまだ子どもなんだから。今みたいに冒険している方が合っていると思うよ。」
店主の言葉に、私と陽真は目を見開く。
そして、自然と笑顔が浮かんだ。
「ありがとうございます。」
子ども、と言う言葉をこんなにいい意味で聞いたのは初めてだった。
思えば、私と陽真を微笑ましく見ているのも店主くらいだ。
「はいよ。メロンソーダ。」
そのまま二人分のメロンソーダを、陽真に手で渡して去っていった。
「ありがとうございましす。はい、小夜。」
「あ、ありがとう。」
受け取る瞬間、陽真と手が触れた。
「あ、、、」
声が重なった。
そして熱く感じる。
ーーどうしよう、、、凄く、緊張してる、、、?
沈黙を破ったのは、陽真だった。
「本当にいい人だね。店主。」
「う、うん。私も、そんな風に言ってあげられる大人になりたい。」
「そうだね。」
その後も、時間が経っていく。
私たちは、楽しんだ。
限られた時間、限られたことを自由にやった。
文月は葉月になり、それも終わりになっていた。

