「、、、さん、、、さん、、、水無瀬さん。」
その声にハッとした。
「え、え、あっ。」
「やっと気づきましたのね。」
慌てて見渡すと、教室中の視線を感じる。
常盤さんが、ずっと声をかけてくれていたらしい。
「水無瀬。何をぼーっとしているんだ。」
「も、申し訳ございません。」
先生に怒られてしまった。
成績が微妙なだけあって、授業は集中しないとと思っていたのに。
授業終わり、常盤さんが不思議そうに言う。
「水無瀬さん。最近は気が抜けることが多いですわね。」
「少し、考え事をしていて、、、常盤さん。声をかけてくださりありがとうございました。」
「いいえ。」
学校からの帰り道、喫茶店に向かう足で今日の授業を思い返す。
私が考えていたこと。
それは勿論、空亡のこと、一族のこと。
ーーそして、、、
「陽真のこと。」
「俺が何だって?」
「え!?陽真、、、!」
ニコニコした陽真が立っていた。
相変わらず明るい。
「元気ないね。もう夏休みだって言うのに。」
「え、ああそっか。忘れてた。」
「忘れてたの?」
陽真は面白そうに笑いながら言った。
そして、二人で歩き始めた。
「いつも学校と喫茶店と家の三角形なんでしょ。夏休みはどうするの?」
その言葉に、少し考えた。
「夏休み、、、」
例年は、課題をやったり内職をしたり、花嫁修行をしたり、家のことも色々やることはあった。
だけど、年々私への興味が薄れる代わりに自由な時間が増えた。
勉強に行くといえば家を出ることくらい簡単だ。
「喫茶店通ったり、散歩したりしようかな。家にもいたくないし。」
「そっか。それが良いと思うよ。じゃあ、夏休みも会おう。」
「うん。陽真は空いてるの?」
「俺は勉強と修行だけど、それだけじゃ疲れちゃうからさ。」
「そうだよね。」
そうこうしているうちに、夏休みに入った。
時の流れは、あっという間だ。
ーー少しでも、、、
もう、分かっていても、願ってしまう。
何度でも、思ってしまう。
少しでも陽真と長くいられることを。
陽真を間近で感じられることを。

