明けぬ空に、君を想う


部屋中が、すっと静まった。

父が、来た。


「よく、集まってくれた。」


威厳が詰まった声だ。

その声に、誰もが姿勢を整えて、頭を下げる。
父はそれを見て、堂々と続ける。


「一族全員が集まるのは、数年ぶりだな。話は勿論だが、飲むことも忘れない。我々は水無瀬家。華やかさも、我々の在り方だ。」


少し明るさを持った声に、皆んな声を上げた。
そして宴が始まったのだ。
ガヤガヤとする空間。

勿論、完全に浮かれることはない。
必要なことを話す異能者達は、自然と父の周りに集まっている。

その話に、そっと耳を傾けた。


「最近、帝都でも空亡の姿はないそうです。」


兄から切り出した。
そして、他の異能者達はヒソヒソと話し合う。


「やはり、あの件以来か、、、」

「ああ、東都の、特に中心部に多く出現し、帝都に漏れた件だ。」

「これまで、東都にでることすら珍しいと言うのに。」

「いや、違う。ここ数十年、空亡の出現自体減っていた。」

「主に、帝都で多く出ていたがな。」


私でも、分かるくらいには異常だった。
そして、黙って聞いていた父が口を開く。


「そして、、、あの一件で出現した下位空亡、、、」


皆んなが息を呑む。
兄が口を開く。


「そして、下位空亡とは思えない強さ。しばらく減っていた空亡、その間に一体何があったのでしょうね、、、」


ーー陽真も、そんなことを言ってたな、、


空亡が出たりでなかったり、強さがおかしかったり。
異能者も頭を抱えている。
私も頭をフル回転してみたけど、よく分からない。


「間違いないのは、中位空亡や上位空亡が関係していることだ。」


父が言った。
みんな頷く。


「そうですね。奴らが狙って下位空亡の位置を決められる以上は、仕掛けてきていると言うことでしょう。」

「ああ。近いうちにまた、不穏な動きをするだろう。」

「もしかしたら、、、また、大戦争が来ると言うことも、、、」

「、、、ありえるだろうな。」


どうやら、思っていたよりも事態は深刻だったようで、皆んな難しい顔をしている。

異能者じゃ無い人たちも、楽しそうに飲んだりしているけど、父達の会話を何となく気にしている。

私自身も、かなり焦っている。
陽真から貰ったお守りがあるといえど、空亡が私を狙いにきたら周りにも多大な迷惑がかかる。

そんなことを考えていたけど、父はもう一つ重要な話をし始めた。


「あとは、一条のことだ。」


全体が更にピリつく。
私も、思わず表情に出しそうになった。
分家の人たちは口に出し始めた。


「最近、また力をつけたようですね。」

「我々と本当に張り合う気に溢れているようです。」

「昴様、最近の一条はどうですか?」


話を振られた兄は、表情を崩さずに答える。
分家の人達にも、父にも向けて。


「向こうの部隊も、我々の仕切る部隊と同じ命を受けることが多くなりました。」


その言葉に、驚きの声が広がる。


「なんと、、、」

「帝の命か、、、」


そう言う声が相次ぐ。
しかし、その声もかき消す声が一言。


「仕方のない。今の状況に対応できる部隊も一族もいないのだろう。」


父の言葉だった。
私も、少し知っている。

今名家のトップに立つのは水無瀬家と一条家。
その一族の中の長男二人が、若いながらに部隊を率いている。

他に引っ張れる名家もいない状態。
だから、敵対一族である一条家の長男と同じ仕事をすることが多いらしい。


「落ちたものだ。異能一族も、それら率いる軍も。我々で頂点とは、、、」


父の声に、皆んな頷く。
そして父は、きつい顔をした。


「だが。一条には負けぬ。このままでは済まさせない。」


低く響いた声に、改めて皆んな頷く。
圧のかかるような空間が、居心地悪い。

そして父は、兄に言った。


「くれぐれも、一条家の者と馴れ馴れしくしないように。もしくは、油断でもさせておいても良いがな。」

「ええ、分かっています。」


兄はいつも通り、余裕のある笑みで返す。

私は、冷や汗が出ていた。
この空気そのものが、私に向けられているみたいだった。
もしも、私と陽真のことがバレたらただでは済ませれない。

陽真に迷惑がかかることも間違いない。
そして、一条家がどう思うかも計り知れない。


そんな気持ちの中、いつの間にか宴も話し合いも終わっていて、私は自分の部屋にいた。


ーー陽真に、ちゃんとそれを言わないと、、、


そう思って、障子を開けてみた夜空は、どこまでも曇っていた。


ーー光は、見えなかった。