「小夜、大丈夫?」
駆け寄る陽真の目は、揺るぎなく私を見つめている。
さっきまで戦っていたのが嘘みたいに、穏やかな顔。
けれど、確かにそこには、緊張感があった。
「うん、大丈夫。ありがとう。」
私は、息を整えて聞く。
「陽真は、、、異能者だったんだね。」
「そうだよ。小夜、君もなんだね。」
陽真は、全てを理解したような、納得した顔をした。
私は、恐る恐る聞く。
「どうして、、、」
「空亡は、異能者の気配を追うからね。ここまで狙われている人は初めて見た。」
言葉に詰まる私に、陽真は続けた。
「それから、異能者は空亡に悟られないため、気配を隠すことができる。だから、もしかして小夜は、異能を使えないんじゃないかな、、、?」
ここまで気づくなんて、やっぱり異能者は凄いな。
なんて、一人で感心してしまった。
「うん、、、」
そう、私は異能者だけど、異能を使えない。
だから気配を隠せなくて、空亡に狙われる。
周りにいる人は二次被害に会いかねないので、私は出来るだけ逃げるんだけど、空亡によっては気配に敏感だったりスピードが速かったり。
私の一族が私に価値がないというのは、これな理由。
ーー陽真も、がっかりするのかな、、、
知られたショックが大きかった私だけど、陽真は更に聞く。
「じゃあ、護衛が付かないのは?」
「え?」
「名家なら、付くものじゃない?」
まあ、普通はそうだけど、私があまりにも中途半端だったせいで、、、
「まあ、価値がない者は守らなくて良いんだって。」
そう返すと、陽真は目を見開いた。
言葉が止まった、と思ったらまた進んだ。
そして、私に優しい笑顔を向けて言った。
暖かい声だった。
「なら、俺が守るよ。」
かなり衝撃が抑えられなかった。
「え、、、?」
「こんなに毎日会うんだから、きっと守れるよ。」
陽真は本当にただまっすぐと、それを言った。
「いや、流石にそれは申し訳ないよ!大丈夫だから、、、」
「さっきのあれのどこが大丈夫なんだよ!」
陽真は、少し強めに言った。
多分本気で心配してくれてる気がした。
「でも、そこまでしてもらうのは、、、」
「お礼だよ。」
「え?」
「助けてくれた、お礼。」
でも、そんな事したら迷惑がかかる。
だけど陽真の表情が固まりすぎてて、どうしたら良いのやら、、、
「俺がそうしたいんだよ、小夜。」
そう言って、手を差し伸べてくれた。
優しい声。
初めて、そんな風に言ってもらえた。
「陽真、、、」
ーー良いのかな、、、甘えちゃっても。
本当は駄目だって分かっていたけど、その手を取ってしまった。
救われたような気持ちになった。
陽真は満足そうに笑う。
私も、思わず笑ってしまった。
そこで私は、もう一つ気づく。
「あれ、さっきどうして名家って、、、」
「ああ。だって小夜、水無瀬小夜でしょ?」
「え!?なんでそれ、、、」
「ちなみに俺は、一条陽真だよ。」
「、、、ええ!」
『一条家』、それは最も水無瀬家と敵対している一族だった。
だったら、尚更関わってはいけないのに。
「嘘でしょ、、、」
「はは。」
ーー陽真、分かってて、、、
だけど、陽真の笑顔の奥に隠された真剣さが、私の胸を締め付けた。

