明けぬ空に、君を想う



「おい、出たぞ!」

「あれは、、、」

「空亡だー!」

「逃げろ!みんな逃げろ!」


店内も、一瞬で凍りつく。

私は、震えが止まらなかった。
心臓の音がうるさいくらいで、冷や汗をかいていた。

その時、陽真が小さく呟いた。
不思議と、陽真は気配が分かるらしい。


「これ、こっちに向かってきてる、、、!?」


ーーここから出ないと、みんなが、、、

私は考える間もなく、瞬時に扉に向かう。

ーー人けのない道を通っていけばきっと、、、


「小夜!?」

「陽真、ごめんなさい!私ここにいちゃいけないの!」


それしか言えなかった。
とにかく、走り出した。

私は、気配を感じた。

ーー近い、、、

間違いなく、私に近づいてきている。
だから巻きぞいを出すわけには行かない。
だけど速すぎる。
全力で走っているのに、そこまで迫っていた。

目立たない道で、どんどん人けのない森のほうを行く。
そして物陰に隠れて、息を潜めた。

でも、空亡は迷わず私の位置を突き止めたかのように、鋭い黒い霧が迫る。

ーーこれ、、、

避けたけど、わずかに掠った瞬間、何かが抜けるような感覚になる。
気をはっきりさせて、その方向を見る。

そこには恐怖の化身がいた。

背丈は私の倍以上、体を覆う漆黒の霊気は風のようにうねり、空気まで凍らせる。

久しぶりに見た、なんて呑気なことを思ってしまった。


「空亡、、、」


私の足で、逃げ切れないならもう無理だ。
避けるのも尽きる、私はもう持たない。

諦めるのもよくないけど、その場に立ち尽くすことしかできなかった。


「ーーー」


この空亡はしゃべらない。
出たのはうめき声だけ。

ーー来る、、、

攻撃が来るのを察した。
ただじっと私を見ている。
いや、見ているのは、、、


ーー私の異能か、、、


足が縛られたように動かない。
心臓が跳ねる。
終わりかもしれないと思った。
そして私は、目を瞑った。

だけど、いつまで経っても攻撃は当たらなかった。
目を開けると、そこに立っていた。


「陽真、、、!?」


声に出すと、陽真は振り返り、にっこりと笑った。


「小夜、俺が守るから安心して。」


それだけ言って前を向く。

その声は、揺るぎのない光のようだった。
恐怖に押しぶされそうな私の背中を押す。

そして、陽真の手から稲妻のような霊気が迸った。
バチッ、と空気が裂ける音。
眩しい光の帯が空亡を貫き、呻き声が森に響く。


「異能者、、、!?」

「あたり。」


陽真はもう動いていた。

いつの間にか、手には刀。
踏み込み、一瞬で間合いを詰める。

ーー速い、、、

高速で斬りかかる刃が空亡に触れた瞬間、闇は塵となって散った。
静寂の中、陽真は振り返る。