この世界には、古くから異能を持つ者が存在した。
それは、人の心を喰らう「空亡」から人々を守るためだった。
だがその力は、同時に災いを招く者でもあった。
空亡が狙うのは、人の心。
記憶、感情、想いーー
人が大切にしてきた、かけがえのないもの。
それを、なんの前触れもなく奪う。
残されるのは、空っぽになった心だけだった。
人の心は、ときに大きな力となる。
空亡たちはそれを奪い、人が何かを失っていく様を、ただ楽しむ存在だった。
異能者は、強い想いから生まれると言われている。
そのため異能者を多く輩出する一族は、やがて名家と呼ばれるようになった。
人々を守る異能者を、空亡は敵視した。
そしていつしか、真っ先にその異能を狙うようになる。
守るための力は、奪われるために狙われる。
異能者と空亡の戦いはもう千年続いていると言われていた。
今もなお、賑わう街中に、空亡は現れる。
そして、誰かの「大切」を奪いに来る。
ーーそんな世界で、人はなにを信じて、生きていくのか。

