消える僕らの境界線


 電車を降りると、ホームはあっという間に人で埋まった。
 どこかに染み付いたタバコのにおいと、汗のにおいが気持ち悪い。
 すり抜けるように階段を上り、改札へと向かう。
 いつもと変わらないはずだった。
 売店に並ぶ新聞の見出しを横目に、ICカードをタッチする。

 いつもと違うのは、なぜか改札に三度行く手を阻まれたこと。
 
 ——それから、懲りずに僕の周囲を動き回るそいつ。
 頼む頼むと両手を合わせてくるのを無視して歩く。

「なんでだよ、お前。同級生だろ?困っている人には手を差し伸べる。小学生でも知ってんぞ」

「キミは人じゃないだろ」

 と、思わず返事をしてしまう。

「え。死んだら人じゃねぇの?」

 立ち止まったそいつに、僕はつい視線を向けた。

 ——さすがに、無神経だったか。

「…いや、」

 言いかけて、ふと、周りの視線が僕を刺す。
 その怪訝な視線が、僕の周りに空間を作った。

 図らずも、少しだけ歩きやすくなってしまった駅構内を早歩きで抜けた。

 その間も、そいつは隣で「人じゃねぇの?人だよな?」と言っていた。


 …面倒なやつに見つかってしまったな。


「なぁ、人だよな?」