元々火陽国はその名の通りとても暑く、乾燥地帯で領土こそ広大なもののその半数以上は砂漠だった。なかなか雨が降らず、作物が育たないせいで人口は減少の一途を辿り、どうにか国を復興できないかと国王が考えたときある噂を聞いた。
それは、遥か遠くにある小さな島国にいる巫女には天候を操る能力があるというもので、当時の火陽国の王であるナホトの父は藁にもすがるような気持ちでその島国……豊光国へと出向いた。
巫女の能力はとても人気が高く、引くて数多だった。
どの国も彼女を自国へと迎え入れたいと各国みんな必死にアピールした。
もちろん、ナホトの父もまた火陽国には巫女が必要不可欠だということを訴え、巫女を迎え入れられるのならば宝のように大切に扱うと約束し、火陽国の産業の要である宝石を数えきれないほど差し出した。
豊光国は多くの選択肢に悩んだものの、どの国よりも切実に訴え、どこよりも多くの財産を持ってきた火陽国ならば巫女を丁重に扱ってくれるだろうと判断し、巫女であるサクを火陽国に渡すことを決めた。
ただし、豊光国から火陽国へいくつかの取り決めを行った。
それは、サクを大切に扱うこと。
そのためにも、サクを王子の正妻として嫁がせること。
ナホトの父はもちろん了承し、サクはナホトの正妻として盛大に迎え入れた。
そして彼女を丁重に扱いもてなした。
すると、どうだろうか。
サクが火陽国に来てから肌を焦がすほど照りつける陽射しが少なからず和らぎ、滅多に降らないはずの雨がたまに降るようになった。
国民は歓喜した。サクの能力に対して半信半疑だった国民も、手のひらを返して彼女を敬った。サク様万歳と。
そして火陽国に人が増え、仕事が増え、国が栄えていった。……はずだった。
サクを王子の正妻として迎え入れて一年後、国王と王妃が相次いで亡くなった。どうも流行りの病のせいで命を落としてしまったらしい。人々は国王夫妻の急死を嘆いたが、新たな国王としてナホトが玉座に就くことになり、サクがいよいよ王妃になったことで国民は歓喜した。
これで、ますます火陽国は安泰だと。
だが、密かにナホトはそれが不満だった。
この国の王は自分なはずなのに、両親だけでなく国民までもがサクを崇めることがナホトには気に食わなかった。
ボクが一番偉いはずなのにと。
ある日のこと、ナホトの旧い友人である隣国傲烈国の王子タイジが一人外遊と称してやってきた。
ナホトは歓迎の宴を催したあと、外交と称して護衛もつけずに私室にてタイジと二人きりで近況などの話に花を咲かせていた。
「いいのか? 王妃様を放っておいて」
「別に、旧友と会うのにわざわざ連れて来なくてもいいだろう?」
「それもそうか。それにしても、ナホトが王になってから国家運営は安泰だそうじゃないか。羨ましい限りだ」
「それほどでもないさ」
謙遜しながらも、タイジの賞賛の言葉に内心ほくそ笑むナホト。
ナホトはタイジに少なからず劣等感を持っていた。
なぜなら、傲烈国は国土はさほど大きくないが、統制が取れていて国民は誰もが王族を崇めているいわゆる独裁国家で、ナホトはそれに憧れを抱いていたからだ。
だからこそ、タイジからの賞賛の言葉に自分が彼よりも上回った、彼に勝ったのだと密かに勝ち誇った。
「なぁ、ナホト。お前の奥さんは天候を操れるのだろう?」
「あぁ。それがどうした?」
「なら、この嵐を見せてくれないか?」
「嵐……?」
嵐と言われてナホトは理解できずに眉を顰める。嵐というものを経験したことがないナホトは、嵐というものが何なのか知らなかったのだ。
「雷が鳴るほどの大荒れの天候のことだよ。知らないのか?」
「い、いや。知っているさ。だが、どうして嵐になんてする必要がある?」
「そりゃもちろん、能力を見てみたいからさ。実際、君の奥さんが来てから火陽国の天候が素晴らしく安定しているのは知っている。だが、大荒れなどはしたことがないだろう? もしかしたら、この天候は能力などではなく、たまたま運よく安定するようになったのかもしれないじゃないか。だから、本当に思うように天候が操れるのか知りたくてな。つまり、実力が見てみたいんだ」
「実力……」
「どんな天候でも操る能力。素晴らしい奇跡をこの目で見せてもらおうかと思ってね。もちろん、そんなことができないというのなら仕方ないが」
「で、できないはずがないだろう。もちろんできるさ。大雨にして荒れた天気にすればいいのだろう? それくらい簡単にやってみせるさ」
「そうか。それは楽しみだ」
タイジはそう言って無邪気に笑う。そんなタイジとは対照的に、ナホトは焦っていた。
タイジに簡単にできるなどと威勢を張ったはいいが、正直自信はない。
だが、今更できないなどと言えるわけがなかった。ナホトはタイジに弱味を見せるなど絶対に考えられなかった。
そのためには、サクに何が何でも嵐を引き起こさせる必要があった。
(今日……いや、明日までになんとか嵐にさせなくては)
その後、タイジと挨拶をして別れるとナホトはすぐさまサクのいる私室へと向かった。
それは、遥か遠くにある小さな島国にいる巫女には天候を操る能力があるというもので、当時の火陽国の王であるナホトの父は藁にもすがるような気持ちでその島国……豊光国へと出向いた。
巫女の能力はとても人気が高く、引くて数多だった。
どの国も彼女を自国へと迎え入れたいと各国みんな必死にアピールした。
もちろん、ナホトの父もまた火陽国には巫女が必要不可欠だということを訴え、巫女を迎え入れられるのならば宝のように大切に扱うと約束し、火陽国の産業の要である宝石を数えきれないほど差し出した。
豊光国は多くの選択肢に悩んだものの、どの国よりも切実に訴え、どこよりも多くの財産を持ってきた火陽国ならば巫女を丁重に扱ってくれるだろうと判断し、巫女であるサクを火陽国に渡すことを決めた。
ただし、豊光国から火陽国へいくつかの取り決めを行った。
それは、サクを大切に扱うこと。
そのためにも、サクを王子の正妻として嫁がせること。
ナホトの父はもちろん了承し、サクはナホトの正妻として盛大に迎え入れた。
そして彼女を丁重に扱いもてなした。
すると、どうだろうか。
サクが火陽国に来てから肌を焦がすほど照りつける陽射しが少なからず和らぎ、滅多に降らないはずの雨がたまに降るようになった。
国民は歓喜した。サクの能力に対して半信半疑だった国民も、手のひらを返して彼女を敬った。サク様万歳と。
そして火陽国に人が増え、仕事が増え、国が栄えていった。……はずだった。
サクを王子の正妻として迎え入れて一年後、国王と王妃が相次いで亡くなった。どうも流行りの病のせいで命を落としてしまったらしい。人々は国王夫妻の急死を嘆いたが、新たな国王としてナホトが玉座に就くことになり、サクがいよいよ王妃になったことで国民は歓喜した。
これで、ますます火陽国は安泰だと。
だが、密かにナホトはそれが不満だった。
この国の王は自分なはずなのに、両親だけでなく国民までもがサクを崇めることがナホトには気に食わなかった。
ボクが一番偉いはずなのにと。
ある日のこと、ナホトの旧い友人である隣国傲烈国の王子タイジが一人外遊と称してやってきた。
ナホトは歓迎の宴を催したあと、外交と称して護衛もつけずに私室にてタイジと二人きりで近況などの話に花を咲かせていた。
「いいのか? 王妃様を放っておいて」
「別に、旧友と会うのにわざわざ連れて来なくてもいいだろう?」
「それもそうか。それにしても、ナホトが王になってから国家運営は安泰だそうじゃないか。羨ましい限りだ」
「それほどでもないさ」
謙遜しながらも、タイジの賞賛の言葉に内心ほくそ笑むナホト。
ナホトはタイジに少なからず劣等感を持っていた。
なぜなら、傲烈国は国土はさほど大きくないが、統制が取れていて国民は誰もが王族を崇めているいわゆる独裁国家で、ナホトはそれに憧れを抱いていたからだ。
だからこそ、タイジからの賞賛の言葉に自分が彼よりも上回った、彼に勝ったのだと密かに勝ち誇った。
「なぁ、ナホト。お前の奥さんは天候を操れるのだろう?」
「あぁ。それがどうした?」
「なら、この嵐を見せてくれないか?」
「嵐……?」
嵐と言われてナホトは理解できずに眉を顰める。嵐というものを経験したことがないナホトは、嵐というものが何なのか知らなかったのだ。
「雷が鳴るほどの大荒れの天候のことだよ。知らないのか?」
「い、いや。知っているさ。だが、どうして嵐になんてする必要がある?」
「そりゃもちろん、能力を見てみたいからさ。実際、君の奥さんが来てから火陽国の天候が素晴らしく安定しているのは知っている。だが、大荒れなどはしたことがないだろう? もしかしたら、この天候は能力などではなく、たまたま運よく安定するようになったのかもしれないじゃないか。だから、本当に思うように天候が操れるのか知りたくてな。つまり、実力が見てみたいんだ」
「実力……」
「どんな天候でも操る能力。素晴らしい奇跡をこの目で見せてもらおうかと思ってね。もちろん、そんなことができないというのなら仕方ないが」
「で、できないはずがないだろう。もちろんできるさ。大雨にして荒れた天気にすればいいのだろう? それくらい簡単にやってみせるさ」
「そうか。それは楽しみだ」
タイジはそう言って無邪気に笑う。そんなタイジとは対照的に、ナホトは焦っていた。
タイジに簡単にできるなどと威勢を張ったはいいが、正直自信はない。
だが、今更できないなどと言えるわけがなかった。ナホトはタイジに弱味を見せるなど絶対に考えられなかった。
そのためには、サクに何が何でも嵐を引き起こさせる必要があった。
(今日……いや、明日までになんとか嵐にさせなくては)
その後、タイジと挨拶をして別れるとナホトはすぐさまサクのいる私室へと向かった。



