カーテンを開き、窓からしとしとと雨が降り続くのを見て、火陽国の王であるナホトは大きく溜め息を吐いた。
「今日も雨か。いい加減、あの眩い暑すぎる太陽が恋しいな。……サク」
嫌味ったらしくナホトが見下ろしながらそう吐き出せば、びくりと身体を震わせるのはナホトの正妻であるサク。
サクが「申し訳……ございません……」と掠れた声で震えながら地に這うように頭を下げるも、ナホトはふんっと鼻を鳴らし、余計に苛立っている様子を見せた。
「謝るくらいなら早くボクに太陽を見せてくれないか?」
「…………申し訳、ありません」
「はっ! 本当にお前は使い物にならないなっ! 一度くらいまともに能力を使えないのか!? この役立たずが!」
「うっ……」
サクの態度に苛立ったナホトがサクの頭を足蹴にする。サクは蹴られた勢いで倒れ込み、顔を地面に叩きつけられて、あまりの痛みに苦悶の表情をしながら呻く。
だが、ナホトはそれでも満足しなかったのかさらに身体をもう一蹴りし、サクは縮こませるように蹲った。
「もっと有用な能力だと思っていたがな。とんだハズレくじを引かされたものだ」
「ナホト様〜! ナホト様〜! そんなゴミに構っていたら陰気が移ってしまいますわ! こんな陰鬱な虫ケラなど放っておいて、ハレムまでお越しくださいませ〜」
不意に猫撫で声が聞こえたかと思えば、夫婦の寝室だというのに堂々と部屋に入ってくる女。女はサクを汚いものでも見るような侮蔑を含んだ視線で一瞥したあと、ナホトにしなだれかかった。
「ジュリか」
「はい。貴方様のジュリでございますわ」
ジュリはナホトの第二の妻、いわゆる側室だった。他にも数多の側室がいるが、ナホトはこの妖艶かつ甘え上手なジュリをどの妻の中でも一番の贔屓にしていた。
ナホトはジュリの背に手を回すと、サクに見せつけるかのようにジュリと密着する。
「あぁ、そうだな。こんなとこにいても陰気にあてられてジメジメするだけだしな。この天候のように」
「えぇ、本当。ですから、ほら行きましょう? 皆、ナホト様を待っておりますわ」
女は勝ち誇った笑みを浮かべ、サクを見ながらナホトに唇を寄せる。
ナホトもまた、サクに寵愛の格差を見せつけるようにジュリと口づけを交わすと、「部屋を片付けるまで飯抜きだからな。塵一つ残さぬよう、床が舐められるほど綺麗にしておけよ」と言い捨てると二人は意地悪い笑みを浮かべながら仲良く寝室を出ていった。
ぐぎゅるるるる……
誰もいない部屋でサクの腹の虫が鳴く。
その音を聞きながら、サクは大きく溜め息を吐いた。
「お腹が空いたけど、どうせ今日もご飯抜きね」
もうかれこれずっと、サクはまともな食事を食べていない。
いつも何かしらの言いがかりをつけられ、食事を抜かれる日々。さすがに正妻が餓死というのは体裁が悪いからか全く食事を与えられないということはなかったが、それでももらえる食事は残飯だった。
恐らく、今日もきっと難癖をつけられてまともに食事を食べさせてもらえないことは確定しているが、それでも何もしないという選択肢はサクにはないので、ノロノロと身を起こしながらサクは部屋の片付けを始める。
(いつまでこの仕打ちが続くのかしら。こんな苦しい想いをし続けるのならいっそ……)
そんな悲観的な思考が過ぎる。
それほどまでにサクの日常は苦痛の連続だった。
そもそも、なぜ正妻であるはずのサクがこんな仕打ちを受けているかというと、それは五年前に遡る。
「今日も雨か。いい加減、あの眩い暑すぎる太陽が恋しいな。……サク」
嫌味ったらしくナホトが見下ろしながらそう吐き出せば、びくりと身体を震わせるのはナホトの正妻であるサク。
サクが「申し訳……ございません……」と掠れた声で震えながら地に這うように頭を下げるも、ナホトはふんっと鼻を鳴らし、余計に苛立っている様子を見せた。
「謝るくらいなら早くボクに太陽を見せてくれないか?」
「…………申し訳、ありません」
「はっ! 本当にお前は使い物にならないなっ! 一度くらいまともに能力を使えないのか!? この役立たずが!」
「うっ……」
サクの態度に苛立ったナホトがサクの頭を足蹴にする。サクは蹴られた勢いで倒れ込み、顔を地面に叩きつけられて、あまりの痛みに苦悶の表情をしながら呻く。
だが、ナホトはそれでも満足しなかったのかさらに身体をもう一蹴りし、サクは縮こませるように蹲った。
「もっと有用な能力だと思っていたがな。とんだハズレくじを引かされたものだ」
「ナホト様〜! ナホト様〜! そんなゴミに構っていたら陰気が移ってしまいますわ! こんな陰鬱な虫ケラなど放っておいて、ハレムまでお越しくださいませ〜」
不意に猫撫で声が聞こえたかと思えば、夫婦の寝室だというのに堂々と部屋に入ってくる女。女はサクを汚いものでも見るような侮蔑を含んだ視線で一瞥したあと、ナホトにしなだれかかった。
「ジュリか」
「はい。貴方様のジュリでございますわ」
ジュリはナホトの第二の妻、いわゆる側室だった。他にも数多の側室がいるが、ナホトはこの妖艶かつ甘え上手なジュリをどの妻の中でも一番の贔屓にしていた。
ナホトはジュリの背に手を回すと、サクに見せつけるかのようにジュリと密着する。
「あぁ、そうだな。こんなとこにいても陰気にあてられてジメジメするだけだしな。この天候のように」
「えぇ、本当。ですから、ほら行きましょう? 皆、ナホト様を待っておりますわ」
女は勝ち誇った笑みを浮かべ、サクを見ながらナホトに唇を寄せる。
ナホトもまた、サクに寵愛の格差を見せつけるようにジュリと口づけを交わすと、「部屋を片付けるまで飯抜きだからな。塵一つ残さぬよう、床が舐められるほど綺麗にしておけよ」と言い捨てると二人は意地悪い笑みを浮かべながら仲良く寝室を出ていった。
ぐぎゅるるるる……
誰もいない部屋でサクの腹の虫が鳴く。
その音を聞きながら、サクは大きく溜め息を吐いた。
「お腹が空いたけど、どうせ今日もご飯抜きね」
もうかれこれずっと、サクはまともな食事を食べていない。
いつも何かしらの言いがかりをつけられ、食事を抜かれる日々。さすがに正妻が餓死というのは体裁が悪いからか全く食事を与えられないということはなかったが、それでももらえる食事は残飯だった。
恐らく、今日もきっと難癖をつけられてまともに食事を食べさせてもらえないことは確定しているが、それでも何もしないという選択肢はサクにはないので、ノロノロと身を起こしながらサクは部屋の片付けを始める。
(いつまでこの仕打ちが続くのかしら。こんな苦しい想いをし続けるのならいっそ……)
そんな悲観的な思考が過ぎる。
それほどまでにサクの日常は苦痛の連続だった。
そもそも、なぜ正妻であるはずのサクがこんな仕打ちを受けているかというと、それは五年前に遡る。



