無情の花嫁は、無自覚の寵愛で咲き誇る。


驚く私に対してお父様は平然と答えた。驚いたと言っても表情筋はピクリとも動かないため、無表情のまま。

「まぁ、いい提案じゃない!人形の仲間がたくさんいるのよ?人形にとっては最高の居場所ね!」

「そうね!あんた、雲龍家ではいらないガラクタなんだから、最後くらい役に立ちなさいよ。私の代わりに御影家に嫁ぎなさい!」

私が黙っていることをいいことに、お母様もお姉様も言いたい放題。私はどうしたらいいか分からず黙り込む。

「みんなお前の縁談に賛成だ。私から話は通しておく。今日御影家の長男が来たんだ。お前たちの顔は見てないはずだから、向こうも問題ないだろう」

お父様は満足そうに話を終えた。
私が御影家に嫁ぐ?
お姉様の代わりに?

……冗談でしょ?

「あ、あの……お父様」

「なんだ。口答えなら聞かんぞ。とっとと身支度しろ。明後日には家を出てもらうからな」

「そ、んな……」

私が何か言おうとするとすぐにお父様は反論する。そしてそそくさとこの部屋から出ていってしまった。

……どうしよう。
私、何も出来ないのに、いきなり御影家に嫁に行くなんて。

しかもお姉様の代わり……?

「良かったわね。仲間がいるところに行けるわよ。今までご苦労さん。さて、お前は何日御影家に残ることができるか楽しみだわ」

呆然と座り込んでるとお姉様とお母様が見下ろす。くすくすと笑いながら、お姉様はつぶやき、お母様は目を細めながら視線を送る。

「わ、私が、御影家に……」

こうして、私は御影家に嫁ぐことが決まった。本当に突然の縁談に混乱を隠しきれない。

それと同時に、やっと雲龍家から開放される……という安堵感もほんの少し、感じていた。

「さよなら、人形さん」

お姉様はほくそ笑むと、お母様と部屋を出ていった。

***

「忘れ物、ないわよね」

あれから2日後。
縁談の話をしてから、家を出るまでの2日間はあっという間に過ぎていった。

「本当に、出てくのね」

元々少ない身の回りの荷物をまとめた私は、何も無い自分の部屋でぽつりと呟く。

なんだかんだ17になる今日まで住んでいた屋敷をこんなあっさり去ることになるなんて。

本当なら、お姉様が出ていくはずだった。

なのに何故か私が代わりに嫁ぐなんて。一体誰が身代わりに嫁ぐなんて思うだろう。

だけど、不思議とここを離れることは怖くはなかった。むしろほっとしている自分もいて、なんだか複雑な気分だ。