無情の花嫁は、無自覚の寵愛で咲き誇る。


私には関係ないと話をあまり詳しく聞かずにそのまま座り込んでいた。縁談話なんて私には縁がない。

きっとお姉様を求めて成立したもの。

だから、お父様は見せつけるためにあえて私も話し合いの場に設けたのだと思う。

「……相手は、あの“御影家”の長男なんだ」

「御影家って……。あの、精神系の異能が使える、恐ろしい家のとこじゃない!」

お父様の声に一番に反応したのはお母様だった。御影家といえば、異能を使う家系の中でも名家中の名家。

“影縫”や“幻覚”といった精神系の異能を使えて、力も膨大。国からも重宝される御影家。

その家から縁談の話が来るなんて光栄なはずなのだけど……。

「い、嫌よ!私、あの家に行きたくないわ!御影家ってあれでしょ?家の中のみんなが笑わないって噂よ。人形みたいな人しかいないって」

案の定、お姉様はこの話を嫌がった。

御影家は表は優秀な異能の名家なのだが、裏では“人形屋敷”なんて呼ばれるほど無表情の人がたくさんいるらしい。

みんな同じ噂をするので世間を知らない私でもよく知っていた。でも、誰も顔は見たことない。

……見たとしても、覚えていないらしい。

「だがな、これは雲龍家にとってもかなり好都合の縁談なんだ。断るわけにも行かん。どうしても、この家の娘を嫁に出さなければならない」

お父様は困ったようにお姉様を見つめた。

お姉様のこの反応はあらかた想像が着いていたのだろう。ため息混じりにお父様はじっとお姉様を見つめる。

「……い、嫌よ。どんな格好のいい男性でも御影家はいや!お父様、お願い!私をあの家に送り出さないで!」

どんなお願いをされても最後はおれるお姉様だったが今回ばかりは譲らない。お父様とお姉様はお互い見つめ合い、お母様は心配そうに2人を目で追っている。

……早く終わらないかな。

なんてこの縁談の話を他人事のように聞いていた私は、ぼんやりと畳を見つめる。

「……はぁ。しょうがない。今回は長女の紅葉にと話が来ていたが、それを断って次女の皐月に行ってもらうか」

「え……?わ、たしですか?」

ぼんやりとしているとふと名前を呼ばれて顔をあげる。久しぶりに名前を呼ばれて驚いたのもあるが、なんだか縁談の話が私にすり替えられてしまった。

「そうだ。不本意だがこの話を断ることはできない。だが、紅葉は拒否している。だったら、次女の皐月を差し出すしかないだろう?」