無情の花嫁は、無自覚の寵愛で咲き誇る。


私が頭を下げていると冷んやりと冷たい視線を送るお姉様がいた。同室のお母様に話しかけるお姉様。

お母様は私を見下ろすとスっと視線を外し、朝の支度を始める。

「こんな子、私の子供じゃないわ。能面の娘なんて、聞いたことないもの」

「あら、お母様ったら、酷いわね」

お母様が冷たく言い放つとそれに乗っかるようにお姉様が笑う。

これはいつものこと。

お姉様とお母様が良い一日を過ごすために行う“儀式”みたいなもの。私には感情がないのだ。

今更何を言われても、何をされても心は動かない。

「いつまでそこにいるの。さっさと仕事しなさい。あなたに身の回り任せるのは不本意だけど、こうもしないと“居場所”が無いものね。かわいそうな子」

頭を下げ続けていたら、お姉様のイラついた声が聞こえた。私は慌てて立ち上がり、いつも通り支度を手伝う。

今日も私の頬は動かない。

お姉様とお母様の言う通り、私は能面を被った人形のようだ。人間に必要な感情が備わってないのだから、誰も関わりたくないと思うのは当然。

「“本日も私を使っていただき、ありがとうございます。お姉様、何なりとお申し付けください”」

機械が話すように、呪いのような言葉が無意識に発せられる。

「そうね。私が使うから、ありがたく思いなさい。今日の用事は……」

これが私の朝の一通りの出来事。

これが毎朝毎朝、繰り返される。

お姉様は私の言葉を聞いて嬉しそうに今日の予定をペラペラと話し始めた。その横でお母様が静かに準備を進めている。

ここに……私の意思は存在しないのだ。


朝の支度が無事に終わり、一日が始まる。

私は2人の後ろを着いて周り、用事があったらそれをやるというのが仕事だ。

雲龍家に必要ない人間はここに住まわせてもらえるだけありがたい。ここを追い出されたらどこに行けばいいのか分からない。

「お父様。おはようございます」

「おはよう。紅葉、母さん」

朝食の部屋にたどり着いた私たちはまず先にいたお父様に頭を下げた。お父様はお姉様を見るとにこりと微笑む。

……反面、私には一切見向きはされなかった。

「……失礼します」

私は同じ部屋にいてはいけないのですぐに部屋を出ようとした。

「ちょっとまて。今日の夕方、お前たち二人に話がある。夕食前に居間に集まりなさい」

「わ、私もですか?」

お父様に止められ、話があると言われた。