無情の花嫁は、無自覚の寵愛で咲き誇る。


先程の強ばりが嘘のように解け、段々と顔が緩んでいくのがわかる。

「もう、大丈夫だ」

「ありがとう……ございます」

一瞬何が起こったのかわからなかったがほっとして時雨様に抱きついてしまった。
誰かの温もりを感じたくて。

そっと着物の襟を握る。

「……皐月?」

その時、時雨様は私の名前を呼んだ。

初めて、下の名前を呼んだ。なのに、何故か初めて呼ばれた気がしなくて。時雨様の身体に身を任せた。

「時雨様……。私は、ここにいますよ」

……なんだか突然懐かしくなって。私はそっと時雨様の頬に口付けを落とした。軽く、そっと触れる口付け。

一瞬で終わったけど時雨様は私の頬を両手で包み込むと。

今度は時雨様から、私の唇に口付けが落とされた。感じたことの無い気恥しさと温もりに戸惑いながらもそれを受け入れた。

時雨様に口付けされて嫌な感じはまったくない。むしろ、もっと求めたくなるような優しさで。

色んな感情が一気に襲いかかってくる。

「……ん。って、皐月!?皐月!しっかりしろ!」

「時雨様……」

いっぱいいっぱいになってしまったのか、私はその場でへたり込む。どうしたらいいか分からなくて。

ふわふわとした気持ちになっていたら。

……いつの間にか、意識を手放していた。