無情の花嫁は、無自覚の寵愛で咲き誇る。


私はいつもそうだ。何か話さなければ行けない時いつも声が上手く出ない。異性と話す時は尚更言葉に詰まる。

昔から話すことが苦手だった。
何をするにも、家族の了承を得る必要があったし家族には逆らえない。

笑わない娘、気持ち悪い私は自分の意思は通らない。者心着いた時にはもう自分のことを話すこと、意見を言うことを諦めていた。

「別に急かすつもりはない。ゆっくり話せ。お前は俺の嫁なんだから遠慮はいらん」

「あ……の、……」

サラッと時雨様にとんでもないこと言われたような……。
“お前は俺の嫁”って言った?

「あれぇ?誰かと思ったら“人形さん”じゃない。こんな所で何してるのよ〜」

どうしようかと頭を悩ませていると聞き覚えのある声が聞こえて、ビクッと身体が跳ね上がる。

声の聞こえた方を振り向くとそこにはお洒落な着物を着たお姉様とお母様がいた。

「御影家に嫁いだお前がどうしてここにいるんだい?遊んでないでさっさと帰りなさいな。何も出来ない能面の娘などの顔はみたくもない」

「……も、申し訳……」

「お母様ったら言い過ぎよ〜」

突然の2人の鉢合わせの状況についていけない。隣に時雨様がいるのに、私のことを聞かれてしまう。

謝ろうと頭を下げるがげらげらと下品に笑うお姉様の声にかき消されてしまった。
ドクドクと心臓が嫌な音を立てる。

心做しか呼吸も浅くなり、しんどくなってくる。

「でも私もお母様の意見には賛成ね。ひとりでこんなところいても楽しくないでしょう?可哀想な人形さん」

「え……?1人?」

この嵐が早く過ぎないだろうか……と黙り込んでいるとお姉様の言葉に引っかかる。

私の隣には時雨様もいるのに、なんでお姉様は“ひとり”なんて言ったのか。私にはさっぱりわからず、何も出来ない。

「“愚かな娘と母親だな。私の愛する人を傷つけたこと、後悔するといい”」

「え……?」

「“対価は払う。私の願いを叶えろ”」

お姉様の言葉に驚いていると時雨様は何かを呟いた。だけど声が小さくて何を言っていたのか上手く聞き取れない。

でも、表情は怒っているように眉をひそめていた。そして、周りの空気が一瞬、凍ったように感じた。

「し、ぐれ様……?」

「お母様、先を急ぎましょう?こんなやつと話している時間がもったいないわ」

「そうね。能面の娘はもう雲龍家にいないのよね。構わなくてもいいんだわ」