無情の花嫁は、無自覚の寵愛で咲き誇る。


いや、そんなはずはない。
たしかにあの時は数分前の時間に戻っていた。

不思議なことばかり残ったがこのまま部屋に戻る勇気はなかった。

「では、皐月様のお部屋にご案内いたします」

廊下で悶々と考え込んでいるといつの間にか先程の女性がたっていた。存在に気づかなかった私はビクッと肩を震わせる。

い、いつの間に……。

「あ、ありがとうございます」

喉まででかかった言葉を飲み込み、何とか頭を下げる。
御影家は思った以上に謎が多かった。

お姉様の異能にかかりながら記憶を維持していた時雨様。
御影家の女中なのか私の隣を歩く女性の気配の感じなさ。周りを見渡すと意外と人がたくさんいることに気づく。

みんな黙々と仕事をしていて、私たちには目もくれなかった。

……私、この家の花嫁としてやっていけるのかしら。

不安ばかりが残る。
時雨様には嫌われていそうだし、みんなも私には関心が無さそう。

元々雲龍家でもみんなには相手にされなかったのだ。

こういうことには慣れている……と言いたいところだったが何故か大きな不安ばかりが胸の奥に残った。

こうして、私は御影家の花嫁としての新生活を始めることとなった。