「はぁ…………」
重く、大きな溜め息をつきながら出された冷や飯をつつく美弥子。
目の前にあるのは、具のない薄い味噌汁にカラカラに乾ききった干物と萎びた沢庵、そしてカチカチに固くなった白米と、なんとも粗末な食事である。
「よくもまぁ、毎回わざわざこんなものを用意するなんて暇ね。飽きないのかしら」
美弥子はそう溢しながらも、食事を粗末にするなどできはしないので、出された食事を全て綺麗に平らげる。例え味が悪くても。
正直物足りなくて仕方なかったが、文句を言ったところでまともな食事が出ないことはわかりきっていた。
なぜなら、美弥子は以前既に文句を言っていたからである。
というのも、嫁いで来た当初はこの家の財政はそれほど悪いのかとこんな粗末な食事を出されていても我慢していた。
だが、さすがに一週間過ぎた辺りで美弥子もこれはおかしいと勘付いた。それもそのはず、使用人達が誰も痩せこけた様子ではないからだ。
それで使用人に文句を言ったのだが、相変わらず出てくるのは粗末な食事。一応沢庵が増えただけはマシだったが。
そんなこんなで嫁いでから早一ヵ月。
美弥子はいい加減限界に来ていた。
「私は一体何のためにここに来たんだか……」
嫁いでから繰り返されるあんまりな仕打ちに、吐き出すように呟く。
本来、美弥子はこんな扱いをされるような身分ではない。
元々美弥子は華族令嬢であり、現在は侯爵家であり帝都で名を轟かせる帝国軍の若き将校である九鬼家の当主九鬼直義の妻である。言ってしまえば、ここの女主人と言っても過言ではないのだ。
「どうしてこんなことになったのかしら」
そんな疑問を溢したところで、答えてくれる人は誰もいない。
「まさか、直義様がこんな仕打ちをなさるだなんて夢にも思っていなかったわ」
政略結婚などの親にいいなりだった結婚でもなく、望まれて結婚をしたはず。
それなのに、祝言をあげて以降旦那様は仕事が忙しいそうでめっきり会うこともなければ言葉すら交わしてすらない。
祝言のときはしつこいと言っていいほど愛の言葉を囁き、「美弥子さんを大切にするよ」と言ってくれ、初夜の際には美弥子の身体を労り、慈しむように愛してくれたはずなのに。
「釣った魚に餌をやらないってこういうことを言うのね」
自分がそんな立場になるとは想像もしていなかった美弥子にとっては青天の霹靂である。
だが、美弥子はそんなくらいでは挫けなかった。
美弥子は華族令嬢なだけあって、気持ちの面ではとても強かであった。
「侍従長ー! 侍従長はいらっしゃる!?」
美弥子は与えられた離れを出て、本館に向かいながら大声で侍従長を呼ぶ。
すると、奥のほうから侍従長が血相を変えた様子で急いでこちらにやってきた。
「奥様!? どうかなされましたか? なぜ本殿のほうへお越しになられてるのです!?」
「なぜって、誰も私がいる離れに来ないからじゃない」
「それは、失礼致しました。それで、奥様。どのようなご用件でしょう?」
「帳簿が見たいの。用意していただける?」
「帳簿、ですか。はい、ただいまご用意させていただきますから、どうぞ離れへとお戻りください」
「……わかったわ」
侍従長に促され、離れへと戻る。
侍従長の焦りぶりにそんなに自分が本館にいてはまずいのかと苛立ったが、あそこで口論したところで自分に分がないことはわかっていたので美弥子はあえて大人しく引き下がったのだった。
重く、大きな溜め息をつきながら出された冷や飯をつつく美弥子。
目の前にあるのは、具のない薄い味噌汁にカラカラに乾ききった干物と萎びた沢庵、そしてカチカチに固くなった白米と、なんとも粗末な食事である。
「よくもまぁ、毎回わざわざこんなものを用意するなんて暇ね。飽きないのかしら」
美弥子はそう溢しながらも、食事を粗末にするなどできはしないので、出された食事を全て綺麗に平らげる。例え味が悪くても。
正直物足りなくて仕方なかったが、文句を言ったところでまともな食事が出ないことはわかりきっていた。
なぜなら、美弥子は以前既に文句を言っていたからである。
というのも、嫁いで来た当初はこの家の財政はそれほど悪いのかとこんな粗末な食事を出されていても我慢していた。
だが、さすがに一週間過ぎた辺りで美弥子もこれはおかしいと勘付いた。それもそのはず、使用人達が誰も痩せこけた様子ではないからだ。
それで使用人に文句を言ったのだが、相変わらず出てくるのは粗末な食事。一応沢庵が増えただけはマシだったが。
そんなこんなで嫁いでから早一ヵ月。
美弥子はいい加減限界に来ていた。
「私は一体何のためにここに来たんだか……」
嫁いでから繰り返されるあんまりな仕打ちに、吐き出すように呟く。
本来、美弥子はこんな扱いをされるような身分ではない。
元々美弥子は華族令嬢であり、現在は侯爵家であり帝都で名を轟かせる帝国軍の若き将校である九鬼家の当主九鬼直義の妻である。言ってしまえば、ここの女主人と言っても過言ではないのだ。
「どうしてこんなことになったのかしら」
そんな疑問を溢したところで、答えてくれる人は誰もいない。
「まさか、直義様がこんな仕打ちをなさるだなんて夢にも思っていなかったわ」
政略結婚などの親にいいなりだった結婚でもなく、望まれて結婚をしたはず。
それなのに、祝言をあげて以降旦那様は仕事が忙しいそうでめっきり会うこともなければ言葉すら交わしてすらない。
祝言のときはしつこいと言っていいほど愛の言葉を囁き、「美弥子さんを大切にするよ」と言ってくれ、初夜の際には美弥子の身体を労り、慈しむように愛してくれたはずなのに。
「釣った魚に餌をやらないってこういうことを言うのね」
自分がそんな立場になるとは想像もしていなかった美弥子にとっては青天の霹靂である。
だが、美弥子はそんなくらいでは挫けなかった。
美弥子は華族令嬢なだけあって、気持ちの面ではとても強かであった。
「侍従長ー! 侍従長はいらっしゃる!?」
美弥子は与えられた離れを出て、本館に向かいながら大声で侍従長を呼ぶ。
すると、奥のほうから侍従長が血相を変えた様子で急いでこちらにやってきた。
「奥様!? どうかなされましたか? なぜ本殿のほうへお越しになられてるのです!?」
「なぜって、誰も私がいる離れに来ないからじゃない」
「それは、失礼致しました。それで、奥様。どのようなご用件でしょう?」
「帳簿が見たいの。用意していただける?」
「帳簿、ですか。はい、ただいまご用意させていただきますから、どうぞ離れへとお戻りください」
「……わかったわ」
侍従長に促され、離れへと戻る。
侍従長の焦りぶりにそんなに自分が本館にいてはまずいのかと苛立ったが、あそこで口論したところで自分に分がないことはわかっていたので美弥子はあえて大人しく引き下がったのだった。



