"光の東宮を暗殺せよ"
それがホタルに与えられた役目だった。
叔母に命令され、嫁がされたのは白鬼一族と呼ばれる光の東宮のもと。ホタルは人間の武官と黒鬼の女との間に生まれた半妖の子供で、黒鬼にとって人間とは忌み嫌われる対象だ。
ホタルの叔母・サグメの女御は現天皇の皇后としても黒鬼一族の有力候補であるが、五年前に晩年の末ようやく第一子を男児として設けることができた。そんな中、天皇が突如として崩御した。
「白鬼などに鬼山嶽を取られてなるものか。我ら黒鬼は何千年にも渡ってこの世を天皇に嫁ぎ治めてきた。それをぽっと出の下級娘などが主上の寵愛はおろか子まで設けおって。ああ憎たらしい、憎たらしい」
サグメの女御はギリギリと歯を鳴らせばご立腹だ。
どうやらもう一人の女御が天皇との間に設けた子が気に食わないらしい。ホタルは基本政治に関する知識にはとんと無頓着ではあるが、叔母にこんな人を持てば嫌でも内部情報は耳に入ってくるもの。
両親を失い、女御に引き取られても所詮は半妖。
決していい待遇を受けれる訳ではなかった。
下級女官として身の回りの雑用を押し付けられたり、馬や牛の世話といった汚れ仕事を手伝いながらホタルは密かに剣の腕を磨いた。父親譲りで武術に秀で、ザンバラ髪にあばら骨が目立つ体型だけで言えば、周りはホタルが女人であると気が付くことはなく、後宮で最も優れた剣の名手と言われ恐れられていた。
「お前がやることは一つ。光の東宮の元へ正妻として嫁いで貰うよ。東宮の心を掴んだら暗殺するんだ」
「暗殺?私に皇太子を殺せと⁈」
「なんだい怖いのかい。我が子が次期天皇へ即位するのに数年はかかるんだ。そのうちに東宮が力なんてつけてみな。完全に白鬼が優位にコッチは不利になっちまう。なんとしても暗殺するんだよ」
そうしてホタルは光の東宮の元に嫁がされてしまった。
初めて会った彼は才徳兼備な母親と怜悧冷徹な前天皇の血を半分ずつ受け継いだ、白い髪と角の生えたとても麗しい知性に溢れた顔の青年であったが、ホタルを見るその瞳はとても冷たく冷徹だった。
「誤解しないうちに伝えるけど。僕は君に興味なんてない。この婚礼も形式上で僕らは所詮お飾り夫婦。愛なんてつまらないものは一切期待しないことだね」
「…わかりました」
それっきり、婚礼の儀が終われば彼は本当に寝所に来ることはなかった。それから暫くして東宮は鬼山嶽の新天皇として即位すれば、ますますホタルに関心なんてものは割かなくなり、一切会いに来ることはなかった。
それがホタルに与えられた役目だった。
叔母に命令され、嫁がされたのは白鬼一族と呼ばれる光の東宮のもと。ホタルは人間の武官と黒鬼の女との間に生まれた半妖の子供で、黒鬼にとって人間とは忌み嫌われる対象だ。
ホタルの叔母・サグメの女御は現天皇の皇后としても黒鬼一族の有力候補であるが、五年前に晩年の末ようやく第一子を男児として設けることができた。そんな中、天皇が突如として崩御した。
「白鬼などに鬼山嶽を取られてなるものか。我ら黒鬼は何千年にも渡ってこの世を天皇に嫁ぎ治めてきた。それをぽっと出の下級娘などが主上の寵愛はおろか子まで設けおって。ああ憎たらしい、憎たらしい」
サグメの女御はギリギリと歯を鳴らせばご立腹だ。
どうやらもう一人の女御が天皇との間に設けた子が気に食わないらしい。ホタルは基本政治に関する知識にはとんと無頓着ではあるが、叔母にこんな人を持てば嫌でも内部情報は耳に入ってくるもの。
両親を失い、女御に引き取られても所詮は半妖。
決していい待遇を受けれる訳ではなかった。
下級女官として身の回りの雑用を押し付けられたり、馬や牛の世話といった汚れ仕事を手伝いながらホタルは密かに剣の腕を磨いた。父親譲りで武術に秀で、ザンバラ髪にあばら骨が目立つ体型だけで言えば、周りはホタルが女人であると気が付くことはなく、後宮で最も優れた剣の名手と言われ恐れられていた。
「お前がやることは一つ。光の東宮の元へ正妻として嫁いで貰うよ。東宮の心を掴んだら暗殺するんだ」
「暗殺?私に皇太子を殺せと⁈」
「なんだい怖いのかい。我が子が次期天皇へ即位するのに数年はかかるんだ。そのうちに東宮が力なんてつけてみな。完全に白鬼が優位にコッチは不利になっちまう。なんとしても暗殺するんだよ」
そうしてホタルは光の東宮の元に嫁がされてしまった。
初めて会った彼は才徳兼備な母親と怜悧冷徹な前天皇の血を半分ずつ受け継いだ、白い髪と角の生えたとても麗しい知性に溢れた顔の青年であったが、ホタルを見るその瞳はとても冷たく冷徹だった。
「誤解しないうちに伝えるけど。僕は君に興味なんてない。この婚礼も形式上で僕らは所詮お飾り夫婦。愛なんてつまらないものは一切期待しないことだね」
「…わかりました」
それっきり、婚礼の儀が終われば彼は本当に寝所に来ることはなかった。それから暫くして東宮は鬼山嶽の新天皇として即位すれば、ますますホタルに関心なんてものは割かなくなり、一切会いに来ることはなかった。



