白い空間が剥がれ落ちる。
サラサラと消えていく向こうに、寮の部屋が現れた。
「本当に、終わったのか」
穏佳が呟いて、息を吐いた。
詩歌は、穏佳の体に腕を回して抱き付いた。
「うわぁ!」
穏佳が大袈裟なほど声を上げた。
抱き付いた穏佳の胸に、こつんと額を当てる。
「どど、どうした? どこか痛い、のか?」
穏佳が、あからさまに動揺している。
詩歌は、穏佳の胸にスリスリと顔を擦り付けた。
「僕と穏佳は……恋人?」
穏佳の体が大袈裟なほど震えた。
「ここ、こい、こい……」
壊れたスピーカーみたいに、穏佳が沈黙した。
「さっき、好きって言ってくれた」
笑った顔が好きだと言ってくれた。
笑っていない詩歌も、穏佳は好きと言ってくれるだろうか。
「それは、だから、人は笑顔のほうが魅力的な場合が多い、から」
しどろもどろに穏佳が言い訳している。
「僕は穏佳が好き。恋人がいい」
抱き付いた腕で引き寄せて、穏佳を見上げた。
穏佳が、ごくりと息を飲んだ。
その喉が大きく上下する。
「あ……そうか。いや……」
穏佳の耳が真っ赤だ。
手で口元を覆って、顔を逸らした。
「ちょっと、待って、詩歌。心の準備が、まだ……」
穏佳のシャツを、ぐいと引っ張る。
「えっ! 詩歌……ん」
強引に引き寄せた唇に、自分から口付けた。
穏佳の目が驚きを帯びて詩歌を見詰める。
「ほっぺに、ちゅって、してくれたのに。恋人じゃないの?」
穏佳の顔が真っ赤に染まった。
「……もはや、ほっぺどころじゃないだろ」
穏佳の手が詩歌の頬を包む。
ゆっくりと降りてきた唇が、詩歌の唇に重なった。
押し付けられた熱が、トンボ石みたいに優しい。
詩歌は、穏佳のシャツを、きゅっと握った。
「んぅ……」
熱で濡れた唇を離して、互いを見詰める。
「好きだよ、詩歌。何があっても、俺が守りたい」
ふわりと抱き上げられて、詩歌の体が少しだけ浮いた。
「もういっぱい、守ってもらったよ」
「これからも、ずっと一緒にいて、俺が詩歌を守り続けたいんだ」
きっと穏佳は、本当に詩歌を守ってくれる。
素直に、そう思える。
(七不思議を調べている時、穏佳はいつも一番に僕を守ってくれた。一度も逃げなかった)
どう考えても普通じゃない状況なのに、投げ出さなかった。
ずっと詩歌の手を握っていてくれた。
「僕も、穏佳の役に立ちたい」
「隣で笑いかけてくれるだけで、充分だ」
穏佳が、詩歌の額に額を合わせた。
「詩歌のこと、好きすぎて、今が夢みたいだ。これ以上は、俺が持たない」
「持たない?」
よくわからなくて、首を傾げる。
穏佳が、詩歌の肩に顔を埋めた。
「詩歌が可愛すぎる。好きすぎて、辛い」
「辛いの……きゃ!」
ぎゅっと、力いっぱい抱きしめられた。
苦しいくらいなのに、その強さが嬉しい。
「僕も、穏佳が大好き」
穏佳の体を抱き返して、その熱をいっぱいに感じた。
日常の音が戻った部屋の外に、人の息遣いと生活の気配を感じる。
かけがえのない大事な人と日常に戻れたことに、心から安堵した。
胸を伝って穏佳の鼓動が流れ込む。心臓の音を感じられる距離が、何より嬉しかった。
サラサラと消えていく向こうに、寮の部屋が現れた。
「本当に、終わったのか」
穏佳が呟いて、息を吐いた。
詩歌は、穏佳の体に腕を回して抱き付いた。
「うわぁ!」
穏佳が大袈裟なほど声を上げた。
抱き付いた穏佳の胸に、こつんと額を当てる。
「どど、どうした? どこか痛い、のか?」
穏佳が、あからさまに動揺している。
詩歌は、穏佳の胸にスリスリと顔を擦り付けた。
「僕と穏佳は……恋人?」
穏佳の体が大袈裟なほど震えた。
「ここ、こい、こい……」
壊れたスピーカーみたいに、穏佳が沈黙した。
「さっき、好きって言ってくれた」
笑った顔が好きだと言ってくれた。
笑っていない詩歌も、穏佳は好きと言ってくれるだろうか。
「それは、だから、人は笑顔のほうが魅力的な場合が多い、から」
しどろもどろに穏佳が言い訳している。
「僕は穏佳が好き。恋人がいい」
抱き付いた腕で引き寄せて、穏佳を見上げた。
穏佳が、ごくりと息を飲んだ。
その喉が大きく上下する。
「あ……そうか。いや……」
穏佳の耳が真っ赤だ。
手で口元を覆って、顔を逸らした。
「ちょっと、待って、詩歌。心の準備が、まだ……」
穏佳のシャツを、ぐいと引っ張る。
「えっ! 詩歌……ん」
強引に引き寄せた唇に、自分から口付けた。
穏佳の目が驚きを帯びて詩歌を見詰める。
「ほっぺに、ちゅって、してくれたのに。恋人じゃないの?」
穏佳の顔が真っ赤に染まった。
「……もはや、ほっぺどころじゃないだろ」
穏佳の手が詩歌の頬を包む。
ゆっくりと降りてきた唇が、詩歌の唇に重なった。
押し付けられた熱が、トンボ石みたいに優しい。
詩歌は、穏佳のシャツを、きゅっと握った。
「んぅ……」
熱で濡れた唇を離して、互いを見詰める。
「好きだよ、詩歌。何があっても、俺が守りたい」
ふわりと抱き上げられて、詩歌の体が少しだけ浮いた。
「もういっぱい、守ってもらったよ」
「これからも、ずっと一緒にいて、俺が詩歌を守り続けたいんだ」
きっと穏佳は、本当に詩歌を守ってくれる。
素直に、そう思える。
(七不思議を調べている時、穏佳はいつも一番に僕を守ってくれた。一度も逃げなかった)
どう考えても普通じゃない状況なのに、投げ出さなかった。
ずっと詩歌の手を握っていてくれた。
「僕も、穏佳の役に立ちたい」
「隣で笑いかけてくれるだけで、充分だ」
穏佳が、詩歌の額に額を合わせた。
「詩歌のこと、好きすぎて、今が夢みたいだ。これ以上は、俺が持たない」
「持たない?」
よくわからなくて、首を傾げる。
穏佳が、詩歌の肩に顔を埋めた。
「詩歌が可愛すぎる。好きすぎて、辛い」
「辛いの……きゃ!」
ぎゅっと、力いっぱい抱きしめられた。
苦しいくらいなのに、その強さが嬉しい。
「僕も、穏佳が大好き」
穏佳の体を抱き返して、その熱をいっぱいに感じた。
日常の音が戻った部屋の外に、人の息遣いと生活の気配を感じる。
かけがえのない大事な人と日常に戻れたことに、心から安堵した。
胸を伝って穏佳の鼓動が流れ込む。心臓の音を感じられる距離が、何より嬉しかった。



