別々の高校に進学した元親友とフードコートで再会してから様子がおかしいのだが…

 顔を見た瞬間、金縛りみたいに動けなくなった。
 嬉しさと懐かしさが溢れてすぐにでも飛びつきたいのに、裏切ってしまった後ろめたさのせいで逃げたくもなる。
「あ……おれ……」
 じり、と後ずさりした瞬間、
「朔(さく)!」
 ぱしっ、と手首を掴まれた。そのまま少し乱暴に引き寄せられて懐に抱きこまれる。
「会いたかった……朔……ずっと、ずぅっと探してた……朔」
 かすかに声が震えている。
「もう離さないから――」


 あの日、おれたちは別々の道を選んだはずだった。――フードコートでアイツに腕を掴まれるまでは。


   ※   ※   ※


 中学三年の三月、おれは親友にさよならを言った。
『もう会わないって……――なんでそんなこと言うんだよ。ヤだよ、朔、俺は……』
 スマホの向こうから消え入りそうな声が聞こえてくる。でもおれの心は揺れなかった。嵐のあとのように凪いで、もう涙も出てこない。
「なにも一生会わないってわけじゃないよ。進学する高校が別なんだから必然的に会わなくなるって言っただけ。理央(りお)も新しい友だちや彼女ができるかもしれないじゃん。だから無理してまで会うのはよそうって、そういう意味だよ」
 手元にあった合格祈願のお守りをぎゅっと握りしめた。アイツとお揃いの、桜色のお守りだ。
『……朔は、それでいいの?』
 静かな問いかけに心が波立つ。
 良くない。でも駄々をこねても現実は変わらないのだ。また涙が込み上げてくるのを必死にこらえた。
「ごめん、理央。本当にごめん……全部おれが悪いんだ……もう電話かけてこないで欲しい……つらい」
 電話を切ろうとした直前に必死な叫びが聞こえてきた。
『俺は絶対にイヤだ! どんな手を使っても――』
 ぷつっ、と電話が切れた。通話画面が切り替わり、さっまで見ていた専用サイトの画面が浮かび上がった。
 『不合格』と表示されている。
 同じ高校に行こうと理央と約束していたのに、おれが破ってしまったのだ。
「なんで不合格なんだよ……なんで行けないんだよ、理央と同じ高校……」
 ベッドに体を投げ出して枕を抱きしめた。とっくに枯れたと思った涙が止まらない。
「おれ、どうしたらいいんだ……? おしえてくれよ……たすけてくれよ……理央」

 サクラチル。
 夢にまで見た理央との高校生活は、始まる前に終わってしまった。