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しばらくして始まった、インディーズ最後のツアー。
ライブも、終演後の楽屋も、未だかつてないほどの熱気に満ちていた。
オレは名称未設定のプレイリストに最後まで残っていた曲の歌詞を仕上げ、ギリギリのところでツアーに間に合わせた。 ’Afterglow’ と名づけたその曲をライブで初披露し──メンバーにも関係者にも好評だった。
「歌詞の世界観変わったよな。感情の余白とか余韻が残る」
「他の曲と毛色違うし、ハノンの新境地だな」
SNSを通して興奮冷めやらぬファンの感想がリアルタイムで伝わってくるのか、スタッフもスマホをスクロールする手が止まらない。別のスタッフから「時間をかけた甲斐があった」と肩を叩かれたハヤトも、満足げに頷く。
「当たり前だろ。この曲、誰が作ったと思ってんだよ。なぁハノン」
「……そう、だな」
ハヤトの言葉に、オレはただ笑うしかなかった。
言葉を絞り出そうとした喉が、まるで棘に刺されたようにチクチクと痛む。
皮肉すぎる。
ハヤトの曲に、オレは──碧空を想った言葉を乗せてしまった。
’Afterglow’ は、あの夜明けに碧空に捧げた歌。
罪悪感が胸の奥から、ゆっくりと迫り上がってくる。
Ashに捧げたハノンは、ハヤトの音楽のために言葉を紡ぎ、それは歌となる。
ハノンとして歌うことをオレ自身が望んだのに、碧空に捧げてしまった。
裏切りを打ち消そうと、何度も何度も書き直した。今夜のライブが始まる直前まで、迷っていた──これでいいのかと。でも、どんなにやり直しても、鈍い光が差し込むあの部屋で湧き出てきたものを越えられなかった。心に走ったあの一瞬の高熱は蘇らなかった。
『あなたの声は、誰のためのものでもなくて、あなた自身のものだよ』
碧空の言葉がリフレインする。
気づいてしまった。
きっとあの時、オレはハノンじゃなく、奏音として歌っていた。
この歌をAshとハヤトの夢に重ねてはいけない──オレはハノンとして歌い続けていくのだから。
あまりに愚かな後ろめたさが、じわりと胸の奥に広がっていく。
ライブの余韻に満ちたメンバーやスタッフの賑やかな輪から、オレは静かに離れた。
しばらくして始まった、インディーズ最後のツアー。
ライブも、終演後の楽屋も、未だかつてないほどの熱気に満ちていた。
オレは名称未設定のプレイリストに最後まで残っていた曲の歌詞を仕上げ、ギリギリのところでツアーに間に合わせた。 ’Afterglow’ と名づけたその曲をライブで初披露し──メンバーにも関係者にも好評だった。
「歌詞の世界観変わったよな。感情の余白とか余韻が残る」
「他の曲と毛色違うし、ハノンの新境地だな」
SNSを通して興奮冷めやらぬファンの感想がリアルタイムで伝わってくるのか、スタッフもスマホをスクロールする手が止まらない。別のスタッフから「時間をかけた甲斐があった」と肩を叩かれたハヤトも、満足げに頷く。
「当たり前だろ。この曲、誰が作ったと思ってんだよ。なぁハノン」
「……そう、だな」
ハヤトの言葉に、オレはただ笑うしかなかった。
言葉を絞り出そうとした喉が、まるで棘に刺されたようにチクチクと痛む。
皮肉すぎる。
ハヤトの曲に、オレは──碧空を想った言葉を乗せてしまった。
’Afterglow’ は、あの夜明けに碧空に捧げた歌。
罪悪感が胸の奥から、ゆっくりと迫り上がってくる。
Ashに捧げたハノンは、ハヤトの音楽のために言葉を紡ぎ、それは歌となる。
ハノンとして歌うことをオレ自身が望んだのに、碧空に捧げてしまった。
裏切りを打ち消そうと、何度も何度も書き直した。今夜のライブが始まる直前まで、迷っていた──これでいいのかと。でも、どんなにやり直しても、鈍い光が差し込むあの部屋で湧き出てきたものを越えられなかった。心に走ったあの一瞬の高熱は蘇らなかった。
『あなたの声は、誰のためのものでもなくて、あなた自身のものだよ』
碧空の言葉がリフレインする。
気づいてしまった。
きっとあの時、オレはハノンじゃなく、奏音として歌っていた。
この歌をAshとハヤトの夢に重ねてはいけない──オレはハノンとして歌い続けていくのだから。
あまりに愚かな後ろめたさが、じわりと胸の奥に広がっていく。
ライブの余韻に満ちたメンバーやスタッフの賑やかな輪から、オレは静かに離れた。
