Afterglow ー名称未設定のプレイリストー

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 どこかから、かすかな歌声が聞こえた。
 
 私は、この歌声を知っている。

 あたたかいのに、せつなくて。さみしいのに、優しくて──私を眠りから呼び起こす、少しビブラートのかかった伸びやかな声。なにもかも叶うなら、ずっとこの声に溺れていたいと求めてしまう。

「碧空、起きた? おはよう」

 私の名を呼ぶ声にゆるやかに現実へ意識を引き戻され、どこかぼんやりとした頭のまま、ゆっくりと目を開けた。そのまま、ベッドに深く沈んだ身体をノロノロと起こす。 

 声のする方向に視線を向けると、窓辺で歌を口ずさむ奏音がいた。
 カーテンの隙間からこぼれる朝の淡い光が、奏音の柔らかい髪をキラキラと透かす。

「やっぱり天使でしかない……」
「なにそれ。寝ぼけてんの?」

 私の言葉に、奏音がふわりと笑った。

 彼の目元は少し腫れているように見えたけれど──慈愛に満ちた穏やかな表情だった。

 知らなかった。
 沈む月よりも、流れていく星よりも、やってくる朝の光が似合う人だなんて。

「碧空。昨日の夜は……ありがと」

 奏音は少し照れたようにそう呟くと、まるで呼吸でもするみたいに、また歌を口ずさむ。
 溶けてしまいそうなほど柔らかく甘い声に、心臓が音を立てて鳴った。

 今この瞬間だけは、奏音の歌は私に向けられたものでありますようにと、こっそりと指を絡め祈ってしまった。

 曖昧にしてもよかった、そう思っていた。
 きっと彼は、刹那の感情を向けられることに慣れている人だから。

 ずっと心の奥底に押さえ込んでいた。
 向けてしまえば、他の女の子と同じになってしまうから。

 でも、もう無理だ。
 彼の瞳の中に住みたいと願ってしまった。 

 どうしてそんなに、優しい目で笑いかけるの?
 そんなことをされたら、どうしようもなく泣きたくなってしまう──奏音のことが好きだと。

 あなたの幸せがなにかなんて、わからないのに。