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そして迎えた、周年ライブの夜。
本番直前、ぽっかりと空いた時間に、少しだけ碧空とスマホ越しに話した。
『仕事が長引いてて間に合わなくて……終わったらすぐに向かうね』
メンバーの友人や家族、恋人。続々と関係者が受付を潜り抜け、楽屋を訪れたり、関係者席に向かう頃。オレの招待客のチェックインがまだとスタッフに聞いて、碧空が来ていないと知った。
楽屋に戻り、テーブルに転がっているスマホに残されていたのは、碧空からのメッセージや着信。慌てて連絡すれば、聞こえてきたのは彼女の申し訳なさそうな声。
「無理しないで、誘ったのはこっちだし」と。オレは襲ってきた寂しさを取り繕うように、そう答えた。
胸の奥がチクリと疼く。
喉まで出かかった「それでも来てほしい」は、とっさに飲み込んだ。
視線をチラリと横に移せば、ハヤトがいた。
ヤツはオレの視線を確かに感じたはずなのに──交差せずすり抜ける。
楽屋を訪れた恋人に向ける、ハヤトの見たことのない優しい眼差しに息が乱れた。
あぁ、そうか。
オレは永遠にハノンでしかいられない。
オレが望んで、首にかけ、足に巻きつけた鎖なのに。
それでいいはずなのに。
それを否定したら──消えてしまう。
ハヤトを憎めば、彼の夢や音楽に捧げた自分を否定することになる──どのみちもう、なにひとつ戻れないのに。
それでもライブは待ってくれない。
「今夜は最高の夜をありがとう、メジャーデビューも期待してて」
チケットを手にした、幸運なファン達で埋め尽くされた会場。
視線を送った関係者席に、碧空の姿はない。
見上げれば、点滅するミラーボール。
その眩しさに、頭がクラクラした。
ハノン、ハノンと、名を呼ぶ大歓声は途切れることなく、オレはマイクを握り続けた。
その名を呼ばれるたびに、背中にまやかしの羽が生えていくようだと思った。
そして迎えた、周年ライブの夜。
本番直前、ぽっかりと空いた時間に、少しだけ碧空とスマホ越しに話した。
『仕事が長引いてて間に合わなくて……終わったらすぐに向かうね』
メンバーの友人や家族、恋人。続々と関係者が受付を潜り抜け、楽屋を訪れたり、関係者席に向かう頃。オレの招待客のチェックインがまだとスタッフに聞いて、碧空が来ていないと知った。
楽屋に戻り、テーブルに転がっているスマホに残されていたのは、碧空からのメッセージや着信。慌てて連絡すれば、聞こえてきたのは彼女の申し訳なさそうな声。
「無理しないで、誘ったのはこっちだし」と。オレは襲ってきた寂しさを取り繕うように、そう答えた。
胸の奥がチクリと疼く。
喉まで出かかった「それでも来てほしい」は、とっさに飲み込んだ。
視線をチラリと横に移せば、ハヤトがいた。
ヤツはオレの視線を確かに感じたはずなのに──交差せずすり抜ける。
楽屋を訪れた恋人に向ける、ハヤトの見たことのない優しい眼差しに息が乱れた。
あぁ、そうか。
オレは永遠にハノンでしかいられない。
オレが望んで、首にかけ、足に巻きつけた鎖なのに。
それでいいはずなのに。
それを否定したら──消えてしまう。
ハヤトを憎めば、彼の夢や音楽に捧げた自分を否定することになる──どのみちもう、なにひとつ戻れないのに。
それでもライブは待ってくれない。
「今夜は最高の夜をありがとう、メジャーデビューも期待してて」
チケットを手にした、幸運なファン達で埋め尽くされた会場。
視線を送った関係者席に、碧空の姿はない。
見上げれば、点滅するミラーボール。
その眩しさに、頭がクラクラした。
ハノン、ハノンと、名を呼ぶ大歓声は途切れることなく、オレはマイクを握り続けた。
その名を呼ばれるたびに、背中にまやかしの羽が生えていくようだと思った。
