Afterglow ー名称未設定のプレイリストー

「わぁ、いいですね。それまで何かお手伝いできることがあれば言ってくださいね」

 そう声をかけて席に戻った。
 なんだか胸が熱くなった。

 私の人生の選択は、希望どおりにならないことばかりだった。
 
 なんとか滑り込んだ大学と、ありふれた学生生活の先に待っていたのは、就職というこの先を縛る長い鎖。だからその鎖の長さよりも遠くに行くことはできない。その対価は退屈なほど平凡で不条理な毎日だけど、安定した生活。

 ……でも。

『いくつになっても人生は挑戦よぉ』


 いつかの奏音の言葉が重なる。


『じゃあ、来ればいいのに。こっちに』


 奏音のようにその身ひとつで、まして音楽のような才能がモノをいう世界で。
 いつどうなるかわからない薄い氷の上を歩く度胸なんてない。

 違う、気づいてしまった。
 本当は奏音がうらやましい。
 
 鎖に繋がれた現実に戻るのが怖くて、ライブに行かなくなったんだ。

 本当はずっとあの空間(ライブ)にいたい。
 ステージの上にいる演者も、ファンも、スタッフも。

 あの空間、あの時間が、私は世界で一番好きだ。

 その夜、私はためらいがちに音楽専門学校のウェブサイトを開いた。
 クリックしていいのかと、ずっと迷っていた。 

 ‘社会人向け夜間コース’ と書かれたそのページを。