ヒトを容赦なく剥き出しにする、青白い光に透ける金色の髪。
耳元でシルバーのアクセサリーがキラキラと輝く。
本当に羽が生えていたらどうしようと、濡れた白いシャツが張りついたその背中を見る目が泳いだ。
目を閉じ歌を口ずさむその姿に、釘付けになった。伸びやかな声は切なく、メランコリックで。その歌が窓ガラスを叩く雨音さえも包み込むように響いていく。
誰かの歌を、こうやって聴いたのはどれくらいぶりだろう。
歌を聴くのが好きだったのに。音楽が大好きだったのに──就職して、毎日仕事に追われるまでは。心の底に沈めていたあの頃の気持ちが、ゆっくりと浮上してくるみたいだった。
その歌声に囚われた私の視線に気づいたのか、その天使みたいなヒトが、鼻歌を止めたのは数秒後のこと。
目が合うと、そのヒトの長いまつ毛の奥の瞳がゆっくりと揺れた気がして──その不意打ちに、胸がざわざわして、息が止まった。
「うわ、びっくりした! え…オレここにいても平気ですよね?」
「あっ、はい……もちろん。私も洗濯なんで」
そのヒトも驚いたのか、大きく目を見開きぱちぱちと瞬きを繰り返すと、気まずそうに笑った。
それはこっちだって同じだけど、このままじゃ私が不審者みたいだ。本来の目的を思い出して、そのヒトから数台離れた洗濯機の蓋を開けると、持ってきた洗濯物を手早く詰め込んだ。ピッとスタートボタンを押せば、鈍い音を立てゆっくりとそれが回りだす。
「あれ?」
違和感に気づいたのは、その時のこと。
お腹に重く響く独特の低周波は、目の前からしか聞こえてこない。というか、回っているのは私の洗濯機だけ。じゃあ一体、近くにいるあのヒトは何をしているんだろう。盗み見るように見たそのヒトは、長い手足を持て余したのか、テーブルに腰かけ。頭を振って水を払っている。
金色の髪が揺れ、水の滴が散る。
まるでスローモーションのように、水が最後の光を放ちながら、ゆっくりと床に落ちていく。小さな光の粒子が、キラキラと周囲に散っていくみたいだった。
「オレ、怪しい者じゃないんで。雨が止むまで、もう少しここにいたくて」
「そ、そんな。ご自由にどうぞ。私もこれが終わるまでいますし──あの…」
先ほどの伸びやかな歌声からは想像がつかない、少し掠れた声がした。
どこか疲労の影が見え隠れするあいまいな微笑みは、私の胸に静かな疼きを刻む。
「あの…さっきの歌、すごく素敵でした。天使が歌っているのかと──天使が缶コーヒー持ってるわけないのに」
口を滑らせた私に、天使みたいなヒトが「天使って」と吹き出した。
耳元でシルバーのアクセサリーがキラキラと輝く。
本当に羽が生えていたらどうしようと、濡れた白いシャツが張りついたその背中を見る目が泳いだ。
目を閉じ歌を口ずさむその姿に、釘付けになった。伸びやかな声は切なく、メランコリックで。その歌が窓ガラスを叩く雨音さえも包み込むように響いていく。
誰かの歌を、こうやって聴いたのはどれくらいぶりだろう。
歌を聴くのが好きだったのに。音楽が大好きだったのに──就職して、毎日仕事に追われるまでは。心の底に沈めていたあの頃の気持ちが、ゆっくりと浮上してくるみたいだった。
その歌声に囚われた私の視線に気づいたのか、その天使みたいなヒトが、鼻歌を止めたのは数秒後のこと。
目が合うと、そのヒトの長いまつ毛の奥の瞳がゆっくりと揺れた気がして──その不意打ちに、胸がざわざわして、息が止まった。
「うわ、びっくりした! え…オレここにいても平気ですよね?」
「あっ、はい……もちろん。私も洗濯なんで」
そのヒトも驚いたのか、大きく目を見開きぱちぱちと瞬きを繰り返すと、気まずそうに笑った。
それはこっちだって同じだけど、このままじゃ私が不審者みたいだ。本来の目的を思い出して、そのヒトから数台離れた洗濯機の蓋を開けると、持ってきた洗濯物を手早く詰め込んだ。ピッとスタートボタンを押せば、鈍い音を立てゆっくりとそれが回りだす。
「あれ?」
違和感に気づいたのは、その時のこと。
お腹に重く響く独特の低周波は、目の前からしか聞こえてこない。というか、回っているのは私の洗濯機だけ。じゃあ一体、近くにいるあのヒトは何をしているんだろう。盗み見るように見たそのヒトは、長い手足を持て余したのか、テーブルに腰かけ。頭を振って水を払っている。
金色の髪が揺れ、水の滴が散る。
まるでスローモーションのように、水が最後の光を放ちながら、ゆっくりと床に落ちていく。小さな光の粒子が、キラキラと周囲に散っていくみたいだった。
「オレ、怪しい者じゃないんで。雨が止むまで、もう少しここにいたくて」
「そ、そんな。ご自由にどうぞ。私もこれが終わるまでいますし──あの…」
先ほどの伸びやかな歌声からは想像がつかない、少し掠れた声がした。
どこか疲労の影が見え隠れするあいまいな微笑みは、私の胸に静かな疼きを刻む。
「あの…さっきの歌、すごく素敵でした。天使が歌っているのかと──天使が缶コーヒー持ってるわけないのに」
口を滑らせた私に、天使みたいなヒトが「天使って」と吹き出した。
