Afterglow ー名称未設定のプレイリストー

「歌詞のコンセプト、流れ星? Ashに合わない、やめろ」
「だから仮だろ、まだ完成してない」

「なら最初からやり直せ」
「は? ひっくり返すとか、どこまで傲慢なんだよ、ハヤトは」

「Ashを誰よりも理解してんのは俺だろーが。言わせんなよ」
「別に言わせてねぇよ」

 Ashに合わない、ハノンが紡ぐ言葉じゃない。そう言われたら、普段のオレなら「そうだよな」と素直に頷くだろう。けれど今日は、なぜだか苛立ちが募っていく。ハヤトが誰よりもAshを理解してるなら、その世界に迷わず殉じたハノンを何よりも──。


「だったら相談したい、今夜」


 オレが投げかけた言葉に、ハヤトの目が一瞬冷たくなる。


「それ今夜じゃなきゃダメか?」
「やり直せって言い出したのそっちだろ。だから──」

「なにムキになってんだよ、おまえ」
「は? こっちは真剣に……」

 
「俺を縛ろうとすんな」


 放たれた言葉が、胸の奥に容赦無く突き刺さった。

 そしてまた、思い知らされる。
 オレがどれだけAshとハヤトの音楽に捧げたとしても、逆はオレのために生きるつもりなんてない。

 返す言葉が見つけられなくて、咄嗟に握りしめた拳が震えた。

 貪欲で欲望に忠実なこの男は ’ハノン’ に歌わせるために曲を作り、隣でギターを弾いてきた。それは未来永劫変わることはない。それがたとえオレを困惑させ、嫉妬させ、苦しめようとも。
 
「打ち合わせ終わったし、俺行くわ。今夜は帰んねぇ。ハノンもちょっと頭冷やせ」
「……泊まり?」

 その問いかけに、答えはなかった。
 
 こういう時のハヤトの無言は肯定だと、オレはよく知っている。
 答えの代わりに、立ち上がったハヤトが「じゃあな」と呟いた。

 もう用はないと、去っていくヤツの背中が小さくなってゆく。オレはふと手を伸ばしかけて──聞こえたのは楽しそうな笑い声。

「お、ハヤト帰る? おつおつ。彼女の誕生日だっけ」
「浮気するくせに、こういうとこ本気でマメだよな」

 休憩から戻ってきたコウキ達(バンドメンバー)に絡まれ「うるせぇ」と。まんざらでもなさそうなハヤトの声が、遠くなってゆく。


「──なんなんだよ!」


 何も掴めなかった手が、力なく垂れた。

 視界がぐにゃりと歪む。
 気分が悪い、気持ちが悪い。
 
 胸の奥底から込み上げてきたドロドロとしたおぞましい感情に、オレは咄嗟に掴んだノートをビリビリに破り捨てた。歌詞の断片が、何の価値もないゴミになってゆく。

 胸を巣食うこの気持ちはなんだ
 Ashに捧げた ‘ハノン’ は、誰よりもオレが望んだ鎖なのに
 
 薄暗い疎ましさがつきまとう
 これじゃまるで、呪いだ