「でも私は。奏音みたいに歌が上手いわけでも、楽器が弾けるとか、音楽で誰かを感動させられるわけじゃない」
ステージに立てたらよかったんだけどね、と。小さく呟いた私に、奏音は「でも碧空は、ライブもだし。あの熱気とか空間そのものが好きなんだよね?」と首を傾げた。
そんなの、当たり前。だって、自由でいられる。
叫んだっていいし、静かに聴いてもいい。誰もが──私が、私でいられる特別な場所。
「じゃあ、来ればいいのに。こっちに」
「……え」
奏音の真っ直ぐな視線に射抜かれ、胸にパチパチと火花が散る。心の底に火をつけられたみたいに、熱がジワジワと身体中に広がっていく。
「あそこにいるのは、オレたちと観客だけじゃない。スタッフもいるよ」
音楽業界なんて大変だし、簡単に行けるところじゃない。
叶わないことは口にしたくない。だって、自分が虚しくなる。
それなのに今、誰よりも私の深いところを照らしてくれた気がした。
奏音は私の全てを知ってるわけじゃないのに、縋りたくなってしまう。
こちらを見つめる瞳の中に、彼がずっと積み重ねてきたものがきらめいている気がして。
人生そのものを燃やしながら音楽の世界に生きている彼の言葉が、確実にそして特別になってゆく感覚。うまく説明できないし、どう答えたらいいのかわからなくて──火照りを悟られまいと、他の話題を口にした。
「ねぇ、奏音って何才なの?」
「21だけど?」
「わかってたけど若いね…」
頬杖をつき「たいして変わんないでしょ」と屈託のない笑顔を見せる彼は、万華鏡みたいなヒトだと思った。天使にも悪魔にも、年相応の男の子にもなれて。どれが本当の彼かわからないなら、ひとつも零さずに、全て瞳に焼きつけてしまいたくなる。
もし私がバンドのメンバーだったら、彼をあらゆる色に染めたくなってしまう。彼のファンだったら、奥深くに触れたいと躍起になってしまう。
「え、なに。反応してよ」
「なんでもないってば。あ、えっと。次のドリンク頼む?」
私はごまかすように、グラスに指を伸ばした。すっかりぬるくなったドリンクを乾いた喉に流し込めば、微かに残っていた炭酸がパチパチと弾けた。
ステージに立てたらよかったんだけどね、と。小さく呟いた私に、奏音は「でも碧空は、ライブもだし。あの熱気とか空間そのものが好きなんだよね?」と首を傾げた。
そんなの、当たり前。だって、自由でいられる。
叫んだっていいし、静かに聴いてもいい。誰もが──私が、私でいられる特別な場所。
「じゃあ、来ればいいのに。こっちに」
「……え」
奏音の真っ直ぐな視線に射抜かれ、胸にパチパチと火花が散る。心の底に火をつけられたみたいに、熱がジワジワと身体中に広がっていく。
「あそこにいるのは、オレたちと観客だけじゃない。スタッフもいるよ」
音楽業界なんて大変だし、簡単に行けるところじゃない。
叶わないことは口にしたくない。だって、自分が虚しくなる。
それなのに今、誰よりも私の深いところを照らしてくれた気がした。
奏音は私の全てを知ってるわけじゃないのに、縋りたくなってしまう。
こちらを見つめる瞳の中に、彼がずっと積み重ねてきたものがきらめいている気がして。
人生そのものを燃やしながら音楽の世界に生きている彼の言葉が、確実にそして特別になってゆく感覚。うまく説明できないし、どう答えたらいいのかわからなくて──火照りを悟られまいと、他の話題を口にした。
「ねぇ、奏音って何才なの?」
「21だけど?」
「わかってたけど若いね…」
頬杖をつき「たいして変わんないでしょ」と屈託のない笑顔を見せる彼は、万華鏡みたいなヒトだと思った。天使にも悪魔にも、年相応の男の子にもなれて。どれが本当の彼かわからないなら、ひとつも零さずに、全て瞳に焼きつけてしまいたくなる。
もし私がバンドのメンバーだったら、彼をあらゆる色に染めたくなってしまう。彼のファンだったら、奥深くに触れたいと躍起になってしまう。
「え、なに。反応してよ」
「なんでもないってば。あ、えっと。次のドリンク頼む?」
私はごまかすように、グラスに指を伸ばした。すっかりぬるくなったドリンクを乾いた喉に流し込めば、微かに残っていた炭酸がパチパチと弾けた。
