Afterglow ー名称未設定のプレイリストー

 それから、一週間ぐらい経った頃。
 私は奏音に誘われ、落ち着いた雰囲気の居酒屋に足を運んだ。

「奏音の歌を聴いてたら、少しだけ……音楽が大好きだった頃の気持ちが戻ってくる気がするの」
「そっか、ありがと。嬉しいよ」
 
 個室を照らす柔らかな灯りが、彼の金色の髪を優しく溶かす。

 ジャケットにセンタープレスのパンツ、パンプスという仕事帰りの私に、そこにいるだけで周囲の目を惹く奏音。きっと私たちは、あまりに対照的でアンバランスだ。

 目には見えない、音楽に向ける大きな気持ち。
 それだけが私たちを繋いでくれる。

「ごめんね、仕事帰りに呼び出して。クレーム対応か、聞いてるだけでつらいな。それ」
「人の怒りが耳に残って離れなくなるの。それで心の余裕がなくなっちゃって……音楽さえ聞けなくなった」

「毎日それを繰り返したら、自分を見失うよな……わかるよ」
「だから、誘ってくれた奏音にお礼を言いたくて。ライブの熱気に久しぶりに触れて、すごく楽しかった」

 ポロポロと本音が零れ、少しずつ心の抵抗が消えてゆく。
 運ばれてきたドリンクのグラスを手に取ると、私たちはそれを重ね合わせた。
 
「碧空は本当に音楽が好きなんだね」

 奏音の目が細まって──ふいに視線が絡まる。

 彼の言葉は胸の奥にあたたかな光を届けてくれる。けれど見つめられると、鼓動が速くなって、一瞬で心のすべてが染まってしまいそうになる。

 出会って間もない相手なのに、なんだか息が乱れる。
 安易に答えを探そうとする自分を打ち消すように、私はグラスを握り、喉の熱さを飲み込んだ。