ねえ、桜。私の名は雅通(まさみち)と言うよ。貴女の名を訊いてもいい? 于子と申します、と答えると、雅通様は目を伏せて、物悲しげに微笑んだ。 ゆき……か。貴女は冬の名を持つひとだったんだね。掴もうとして触れれば、儚く消えてしまう。手に入れられるわけがなかったんだね。私は、桜の幻を見ていたのだから。 物悲しく高貴な微笑みのまま、雅通様は囁いた。 ゆきこ……。貴女の名を、私はきっと忘れない。