苔のむすまで


 何を食べる気にもなくなってしまい、布団に倒れ込む。すると、本は揺れて「カサ」という音を立てて、一枚の紙を吐き出した。

 古い本だから、もしかして壊してしまったのでは。焦って飛びつくと、紙には穴が空いておらず、挟み込んであっただけのようだ。

 ほっと胸を撫で下ろし、紙に視線を落とすと、細い字と筆で書かれた字の歌があった。

「日ノ(くに)ヨ ワガ子ニ幾度(いくど)ノ 朝日アレ
 ()き世の日 星になりても 子守歌」

 そう言えば、祖父の軍服姿を見送った後、祖父のすずりには、墨が入ったままだった。

 紙も比較的新しいものだから、これが父さんと祖父の最後の歌だろう。

 全てはわからないけれど、二人は、最後まで僕のことを大切に思ってくれていた。

 クーラーの冷たい空気が涙に濡れた目尻をそっと撫でる。

 泣いて疲れたからか、そのまま目を閉じると、意識が下のほうへと沈んでいく。