歌声のとなりで


第8話 初めての嫉妬

昼休み。

教室はいつもよりにぎやかだった。

「奥本ってサッカー部だよね?」

クラスの女子が話しかけてくる。

「そうだけど」

「合唱も頑張ってるよね」

「まあな」

そんな普通の会話だった。

でも。

少し離れた席で、安藤琥怕がその様子を見ていた。

静かな顔。

でもどこか、少しだけ機嫌が悪そうだった。

「奥本ー、放課後練習する?」

女子が聞く。

「いや、今日は――」

俺が答えようとしたとき。

後ろから声がした。

「奥本」

振り返る。

安藤だった。

静かな顔で言う。

「放課後、練習」

「約束してる」

「あ……」

そうだった。

いつの間にか、毎日のように二人で練習している。

女子が笑う。

「仲いいね」

「練習頑張ってね」

そう言って席に戻っていった。

教室が少し静かになる。

俺は安藤を見る。

「怒ってる?」

「怒ってない」

でも声は少しだけ低い。

「……」

少し沈黙が流れる。

そして安藤が小さく言った。

「奥本」

「ん?」

「さっきの人と」

少し言葉を止める。

「……仲いいの?」

その声は、静かだった。

でも。

少しだけ不安そうだった。

「普通だよ」

「クラスメイトだし」

そう答えると、

安藤は少し黙った。

それから小さく言う。

「……そっか」

でもそのあと、

ぽつりと続けた。

「でも」

「奥本は」

少しだけ俺を見る。

「放課後は、俺と歌って」

その言い方は穏やかだけど——

どこか

独占してるみたいだった。

俺は少し笑う。

「わかってるよ」

そう言うと、

安藤は少しだけ安心したように笑った。

その笑顔を見たとき。

俺は思った。

もしかしてこれって――

嫉妬だったのか?