第7話 安藤の秘密
雨の帰り道。
俺――奥本淕怕は、安藤琥怕の肩を支えながら歩いていた。
「ほんとに大丈夫か?」
「うん……少し立ちくらみしただけ」
安藤は小さく答える。
でも顔色はまだ少し白い。
「無理すんなよ」
そう言うと、安藤は少しだけ笑った。
「奥本って、すごく心配するね」
「そりゃするだろ」
「倒れるの二回目だぞ」
俺がそう言うと、
安藤は少し黙った。
雨の音だけが聞こえる。
そして、ぽつりと言った。
「……昔からなんだ」
「え?」
「体、弱いの」
安藤は傘を見上げながら続ける。
「小さい頃、よく入院してた」
「今はそこまでじゃないけど」
「たまに貧血とか、体調崩す」
俺は少し驚いた。
「それなのに合唱頑張ってんのか」
そう言うと、
安藤は静かにうなずいた。
「うん」
「歌うの好きだから」
少しだけ間が空く。
そして安藤は、ゆっくり言った。
「でも」
「今年は特に頑張りたい」
「なんで?」
聞くと、安藤は少し迷う。
それから、小さく言った。
「……奥本と一緒だから」
「え?」
思わず足が止まる。
安藤は少し恥ずかしそうに目をそらした。
「奥本と歌うと」
「なんか楽しい」
その言葉に、胸がドキッとする。
「だから」
安藤は少し笑った。
「優勝したい」
「奥本と」
その笑顔を見て思った。
俺はきっと、
この笑顔を守りたいって思ってる。
まだそれが何の気持ちなのか、
はっきりわからないけど。
でも――
きっと大事なものだ。


