歌声のとなりで


第6話 雨の日の帰り道

その日の放課後。

音楽室の窓の外は、雨が降っていた。

「……雨か」

俺――奥本淕怕は窓の外を見る。

いつの間にか結構強く降っている。

「奥本」

横から静かな声がする。

安藤琥怕だった。

「傘、持ってる?」

「いや、部室に置きっぱなしだ」

そう言うと、安藤は少し考える。

「俺は持ってる」

「一本」

「……じゃあ先帰るか」

そう言って音楽室を出る。

昇降口に行くと、やっぱり雨は強かった。

安藤が傘を開く。

「奥本」

「入って」

「いいのか?」

「うん」

二人で同じ傘に入る。

思ったより距離が近い。

肩が少し触れる。

「……」

なんとなく落ち着かない。

雨の音だけが聞こえる。

歩きながら、安藤が言った。

「奥本」

「ん?」

「最近」

少し言葉を探すように止まる。

「楽しい」

「何が?」

「合唱」

そして少し間をあけて。

「奥本と練習するの」

思わず安藤を見る。

安藤は前を見たままだった。

「……そうか」

そう言うと、

安藤は少しだけ笑った。

そのとき。

急に安藤の足が止まった。

「安藤?」

見ると、少しふらついている。

「大丈夫か」

「……うん」

でも顔色が少し悪い。

俺はすぐに言った。

「ほら」

肩を貸す。

安藤は一瞬驚いた顔をした。

でもすぐに小さく言った。

「ありがとう」

そして小さな声で続けた。

「奥本って」

「やっぱり優しいね」

雨の中。

同じ傘の下で。

その言葉を聞いたとき、

なぜか胸が少しだけ

強くドキドキした。