歌声のとなりで


第15話 歌声のとなりで

合唱コンクールの舞台。

二年二組は、もう一度ステージに立っていた。

結果発表のあと、優勝クラスがアンコールで歌うことになったからだ。

ライトが体育館を照らす。

クラスのみんなが並ぶ。

俺――奥本淕怕の隣には、もちろん安藤琥怕がいる。

でも今はもう。

ただのクラスメイトじゃない。

恋人同士だ。

まだ誰にも言っていない。

二人だけの秘密。

「奥本」

横から静かな声。

「ん?」

「さっき」

安藤が少し笑う。

「びっくりした」

「俺も」

さっきの告白を思い出して、少し照れる。

そのとき。

ピアノの前奏が始まった。

アンコールの歌。

クラス全員で歌い始める。

体育館に声が響く。

横には安藤がいる。

そのとき。

そっと。

安藤の手が、俺の手に触れた。

「……」

一瞬びっくりする。

でも誰にも見られていない。

安藤は前を向いたまま。

そして――

ゆっくり指を絡めた。

恋人つなぎ。

歌いながら、胸がドキドキする。

クラスのみんなは歌っている。

先生も観客も気づいていない。

この手は。

俺たちだけの秘密。

横を見ると、

安藤がほんの少しだけ笑っていた。

その表情は、すごく幸せそうだった。

俺は思う。

合唱コンクールなんて、最初はどうでもよかった。

でも。

この時間があったから。

この歌があったから。

俺たちは出会えた。

歌声が体育館いっぱいに広がる。

そして俺は思う。

これからもきっと――

俺は安藤のとなりで歌っていく。