第13話 倒れた理由
歌い終わったあと。
体育館には拍手が響いていた。
「二年二組、退場」
先生の声で、クラスのみんなが舞台から降りていく。
俺――奥本淕怕は隣を見る。
安藤琥怕が、少しだけふらついていた。
「安藤」
すぐに腕を支える。
「大丈夫か?」
安藤は少し驚いた顔をして、それから小さく笑った。
「……大丈夫」
でも、顔は少しだけ白い。
「ほんとか?」
「少し疲れただけ」
俺はため息をつく。
「お前ほんと無理するな」
そう言うと、安藤は少し黙った。
体育館の外の廊下に出る。
人も少なくて、静かだった。
すると安藤が言った。
「奥本」
「ん?」
「さっきの歌」
「うん」
「楽しかった」
その声は静かだけど、すごく嬉しそうだった。
「……そうか」
俺も、同じ気持ちだった。
安藤は続ける。
「一年のとき」
「奥本とほとんど話さなかったよね」
「まあな」
「でも」
安藤は少しだけ笑う。
「合唱の練習が始まってから」
「毎日楽しかった」
少し間が空く。
そして小さく言った。
「奥本と一緒だったから」
胸が少しドキッとする。
俺は思わず聞く。
「それって」
「どういう意味だよ」
安藤は少し黙る。
それから静かに言った。
「……まだ秘密」
そう言って、小さく笑った。
「でも」
「もうすぐわかる」


