歌声のとなりで


第12話 本番の日

合唱コンクール当日。

体育館には全校生徒が集まっていた。

舞台の横で、二年二組のメンバーが並んでいる。

俺――奥本淕怕は、少し落ち着かない気持ちで立っていた。

隣には、安藤琥怕。

「安藤」

小さく声をかける。

「大丈夫か?」

安藤は少しだけ笑った。

「うん」

「今日は倒れないよ」

「そういう問題じゃない」

思わず言う。

安藤は少し楽しそうに笑った。

「奥本、ほんと心配するね」

「当たり前だろ」

そう言うと、

安藤は少しだけ優しい顔をした。

そのとき。

「二年二組、準備」

先生の声が響く。

いよいよ舞台に上がる。

ライトが少し眩しい。

観客席には、たくさんの生徒。

心臓が少し速くなる。

並ぶ位置につく。

俺の隣には、安藤がいる。

ピアノの前奏が流れる。

静かな空気。

そして歌が始まる。

何度も練習した曲。

クラス全員の声が体育館に広がる。

歌いながら、ふと横を見る。

安藤はまっすぐ前を見て歌っていた。

その表情は真剣で、

でもどこか嬉しそうだった。

そのとき、俺は思う。

合唱なんてどうでもいいと思ってた。

でも。

安藤と歌うこの時間は、すごく大事だ。

そして、曲はゆっくりクライマックスに向かっていく。

歌声が重なっていく。

あと少しで終わる。

そのとき――

隣で、安藤の手が少しだけ動いた。

でもその意味は、

まだこのときはわからなかった。