歌声のとなりで


第10話 すれ違い

文化祭が終わってから数日。

合唱コンクールの練習は、さらに本格的になっていた。

でも――

俺、奥本淕怕は最近少し悩んでいた。

「奥本、ここ一緒に入ろ」

横から安藤琥怕が楽譜を指さす。

いつも通りの放課後練習。

だけど。

「今日は部活あるから」

俺はそう言って楽譜を閉じた。

安藤が少し驚いた顔をする。

「……そうなんだ」

「ごめん」

そう言って先に帰る。

廊下を歩きながら思う。

安藤は体が弱い。

もし無理してまた倒れたら。

俺と一緒に練習してるせいだったら。

そう考えると、

あまり近くにいない方がいいんじゃないかって思った。

でも。

次の日。

教室で安藤を見ると、少し元気がなかった。

放課後。

音楽室。

俺が入ると、安藤が一人で歌っていた。

静かな声。

でもどこか寂しそうだった。

俺は思わず言う。

「……一人で練習してんのか」

安藤が振り向く。

少しだけ驚いた顔。

でもすぐに視線を落とした。

「うん」

小さな声だった。

少し沈黙が流れる。

そして安藤が言った。

「奥本」

「ん?」

「最近」

少しだけ言葉を止める。

「……避けてる?」

その声は静かだった。

でも少しだけ不安そうだった。

俺はすぐに答えられなかった。

すると安藤が続ける。

「俺、何かした?」

「違う」

すぐに言う。

「そうじゃない」

でもうまく説明できない。

すると安藤は小さく言った。

「……そっか」

その声が、少し寂しそうで。

胸が少し痛くなった。

俺はそのとき気づいた。

距離を取ろうとしたのに。

逆に――

安藤を傷つけてるかもしれないって。