第1話 春のクラス替え
高校二年の春。
新しいクラス表の前には、生徒たちが集まっていた。
「どこだ俺のクラス…」
俺――奥本淕怕は人をかき分けながら紙を見る。
「二年二組……あ、あった」
同じクラスの名前をざっと見ていく。
その中に、一つだけ見覚えのある名前があった。
安藤琥怕。
「あー……」
思わず小さく声が出る。
一年の時も同じクラスだった。
でも——
ほとんど話したことはない。
静かで、いつも本を読んでいるようなやつ。
たしか、体が弱いって噂も聞いたことがある。
「奥本ー!今年も一緒じゃん!」
友達に肩を叩かれ、俺は教室へ向かった。
二年二組の教室。
窓側の席に、安藤が座っていた。
去年と同じように、静かに本を読んでいる。
相変わらずだな。
少しだけ目が合いそうになったけど、
安藤はすぐに本に目を戻した。
……まあ、今年も関わることはないだろ。
そう思って席についた。
しかしその日のホームルームで、担任が言った。
「今年の秋は合唱コンクールがある」
クラスがざわつく。
「二年は特にレベルが上がるからな。優勝狙うぞ」
「えー」「マジかよー」
いろんな声が上がる。
俺は正直、そこまで興味はなかった。
でも先生は続ける。
「今日さっそく音楽室で練習してみよう」
その言葉で、クラス全員が移動することになった。
音楽室。
みんな並んで立つ。
適当に並んだら——
俺の隣に来たのは
安藤だった。
「……」
近くで見ると、顔が少し白い。
でも特に気にせず、楽譜を開く。
「じゃあ一回歌ってみよう」
ピアノが鳴る。
クラス全員で歌い始める。
最初は普通だった。
でも途中で——
隣から、少し苦しそうな息が聞こえた。
「……っ」
横を見る。
安藤の顔が、さっきより青い。
「大丈夫か?」
小さく声をかける。
安藤は小さくうなずいた。
でも次の瞬間——
ぐらっ
体が揺れた。
「おい」
ドサッ
安藤はそのまま床に倒れた。
「安藤!?」
クラスが一気にざわつく。
先生が慌てて言う。
「奥本!保健室まで運べるか!?」
「はい」
俺はすぐにしゃがみこんだ。
安藤を背負う。
思ったよりずっと軽い。
廊下を歩き始める。
すると背中から小さな声が聞こえた。
「……奥本」
「起きてるのか」
「ごめん」
「何が」
「練習……止めちゃった」
そんなこと気にしてるのか。
思わず少し笑った。
「倒れたやつが謝んな」
そう言うと、
背中の安藤は少し黙ってから
小さく言った。
「……ありがとう」
その声は、思ったより優しかった。
この時、俺はまだ知らなかった。
この出来事が——
俺と安藤の関係の始まりになることを。
高校二年の春。
新しいクラス表の前には、生徒たちが集まっていた。
「どこだ俺のクラス…」
俺――奥本淕怕は人をかき分けながら紙を見る。
「二年二組……あ、あった」
同じクラスの名前をざっと見ていく。
その中に、一つだけ見覚えのある名前があった。
安藤琥怕。
「あー……」
思わず小さく声が出る。
一年の時も同じクラスだった。
でも——
ほとんど話したことはない。
静かで、いつも本を読んでいるようなやつ。
たしか、体が弱いって噂も聞いたことがある。
「奥本ー!今年も一緒じゃん!」
友達に肩を叩かれ、俺は教室へ向かった。
二年二組の教室。
窓側の席に、安藤が座っていた。
去年と同じように、静かに本を読んでいる。
相変わらずだな。
少しだけ目が合いそうになったけど、
安藤はすぐに本に目を戻した。
……まあ、今年も関わることはないだろ。
そう思って席についた。
しかしその日のホームルームで、担任が言った。
「今年の秋は合唱コンクールがある」
クラスがざわつく。
「二年は特にレベルが上がるからな。優勝狙うぞ」
「えー」「マジかよー」
いろんな声が上がる。
俺は正直、そこまで興味はなかった。
でも先生は続ける。
「今日さっそく音楽室で練習してみよう」
その言葉で、クラス全員が移動することになった。
音楽室。
みんな並んで立つ。
適当に並んだら——
俺の隣に来たのは
安藤だった。
「……」
近くで見ると、顔が少し白い。
でも特に気にせず、楽譜を開く。
「じゃあ一回歌ってみよう」
ピアノが鳴る。
クラス全員で歌い始める。
最初は普通だった。
でも途中で——
隣から、少し苦しそうな息が聞こえた。
「……っ」
横を見る。
安藤の顔が、さっきより青い。
「大丈夫か?」
小さく声をかける。
安藤は小さくうなずいた。
でも次の瞬間——
ぐらっ
体が揺れた。
「おい」
ドサッ
安藤はそのまま床に倒れた。
「安藤!?」
クラスが一気にざわつく。
先生が慌てて言う。
「奥本!保健室まで運べるか!?」
「はい」
俺はすぐにしゃがみこんだ。
安藤を背負う。
思ったよりずっと軽い。
廊下を歩き始める。
すると背中から小さな声が聞こえた。
「……奥本」
「起きてるのか」
「ごめん」
「何が」
「練習……止めちゃった」
そんなこと気にしてるのか。
思わず少し笑った。
「倒れたやつが謝んな」
そう言うと、
背中の安藤は少し黙ってから
小さく言った。
「……ありがとう」
その声は、思ったより優しかった。
この時、俺はまだ知らなかった。
この出来事が——
俺と安藤の関係の始まりになることを。


