【完結】イケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた


 翌朝、俺の家までたっくんが迎えにきてくれた。
 俺がドアを開けると相変わらず不機嫌そうな――でも心配そうな顔で彼は聞いてくる。

「……マジで大丈夫だった?」
「う……うん。なんとか」

 昨日の夜。
 聖夜からの告白(?)に対して俺は『ほかに好きなやつがいる』と答えた。聖夜はあきらかに信じてなくて、押し問答みたいなやりとりのあとでこう言ってきた。

『なら、こうしよう。夏休みの合宿までにナツに俺のことを好きになってもらえなかったらもう二度と近づかない。ナツのことはあきらめる』
『……ほんとに?』
『そのかわり、それまでは俺になにされても絶対に逃げないって約束してくれる?』

 簡単な話だと思った。いくら顔がよかろうが外面がよかろうが、あんなことをしてきたやつを好きになるはずないんだから。

 それで聖夜から逃げられるなら、と思って俺は『……わかった』とうなずいた。聖夜は微笑む。

『じゃあ明日からね。今夜はもうなにもしないから安心して』
『…………』
『おやすみ』

 聖夜は静かにリビングへと消える。
 すこししてから着信があったことを思いだしてスマホを見ると、たっくんからラインが届いていた。

『緒川とは関わらないほうがいい』

 ……地味に手遅れなそのメッセージに、俺は『本人に聞いたけどそれ勘違いだって』と返信した――。

「……ほんとに勘違いだったのか?」

 学校へと歩きだしながら、疑り深そうにたっくんが聞いてくる。

 今日は始発のバスで帰ってきた。朝飯も食べずに。
 全然寝れなかったから仮眠くらいとりたいと思ったけど、着替えたりだのなんだのしているううちにたっくんが迎えにくる時間になっていた。

「うん、昨日説明したとおり……」
 
 あれは聖夜が俺の机に入っていたプリントを取りだしてもどすところだった。下手に騒ぎになったら犯人を刺激すると思ったからそうしただけ。そして、朝の聖夜の宣言があってからいやがらせは落ちついている。

 俺はそう説明したけれど、たっくんはまだ不安だったらしく『明日ナツの家まで迎えいく』と言ってくれたのだった。

「って言ってもな……」とつぶやいてから、「俺に緒川のことどうこういう資格ないか」とたっくんは髪をかきまわす。

「ナツがいやがらせされてたなんて知らなかったし。すぐ前の席なのに。……最悪だよな。悪い」
「そんなことない。俺もたっくんに心配かけたくなくて隠してたし」

 聖夜が犯人だと正直に打ちあけることはできなかった。たっくんまで面倒ごとに巻きこみたくないし、話そうとすると聖夜の俺への執着まで明かさなければいけなくなる。
 聖夜をかばうかたちにはなるけれど――このまま黙っていたほうが俺にとっても好都合だった。

「でも……ナツは俺のダチなのに」

 悔しそうにたっくんがつぶやく。
 ほんとうに気にしなくていい、と俺が言おうとしたとき。

「決めた」とたっくんが俺を見た。

「これからナツのことは俺が守ってやる。俺から離れるなよ、いいな?」
「……え?」
「今度同じことするやつがいたらぶっ飛ばしてやる」
「いや、待っ、大丈夫だから――」

 俺はあわてたけどたっくんは聞いていない。
「ナツのこと、もうひとりにしねーから」と言われて、俺は彼が頑固なところもあることを思い知らずにはいられなかった。




 ――で、たっくんに守られるみたいにして学校に到着したら。

「おはよう、ナツ」

 昇降口の前。校舎に寄りかかるみたいにして聖夜が俺を待っていた。
「…………」たっくんは聖夜をにらみつけると俺を背後にかばう。

「た、たっくん……」
「……どうかしたの?」
「おまえ、最近ナツにべたべたしすぎ。距離感考えろよ」
「俺は遊佐くんじゃなくてナツに聞いてるんだけど」
「てめえ……っ」

 俺はあわててたっくんの腕をつかむ。「たっくん、大丈夫だから。そんな怒らなくても」

「けど――なあ、転校生がなに考えてんの? まだナツと会ってちょっとしか経ってないくせに友達面しやがって」
「……ほんとに数ヶ月だと思う?」
「は?――」

 聖夜は俺に意味深な目配せをしてくる。俺は思わずたっくんの腕を強くにぎりしめた。
 ――いや、そんななんで『共犯者』みたいな目で見てくるんだよ……!

「まさか……知り合いだったとか? いつ、どこで?」
「秘密」
「……舐めやがって。ナツ、こんなやつ放っておいてもう行こうぜ」
「うん――」

 俺は顔を伏せて聖夜の前を通りすぎようとする。そのとき、聖夜が体をかがめて俺の耳に口を近づけてきた。

「……そうだ、ナツ。昨日泊まりにきたときシャーペン忘れていったよ?」
「……っ!」

 耳を押さえながら俺は飛びすさる。
 やばいと思ったけどもう遅くて、「は? 泊ま……り?」とたっくんがきょとんとしていた。

 聖夜はいつもの嫌みのないさわやかな笑顔を作る。

「あれ、ナツから聞いてなかった? 昨日ナツうちに泊まりにきたんだよ。夜寝かせてあげられなくてごめんね」
「ど、どういう意……」
「聖夜っ!」

 たしかに寝れなかったけど意味がちがう。誤解されそうなことを言う聖夜を俺は怒鳴ったが、彼は反省の色なんて一ミリも見せずに「あとで返すね」と言ってきた。

「――図書室までひとりできてくれる?」