あの日の音が消えるまで

夜は、あまり好きじゃない。

 昼間はまだいい。
 学校にいて、友達がいて、話していれば気がまぎれる。

 でも夜になると、静かすぎる。

 考えないようにしていたことが、頭の中に浮かんでくるから。

 ベッドの上で天井を見つめる。

 時計を見ると、もう深夜一時を過ぎていた。

 なのに、眠れない。

 布団をかぶる。

 目を閉じる。

 大丈夫。
 今日はきっと眠れる。

 そう思っているうちに、いつのまにか意識が遠くなった。

 

 ——ドン!

 

 大きな音がした。

 体がびくっと跳ねる。

 ここはどこ?

 周りが暗い。

 人の声がする。

 ざわざわしている。

 怖い。

 胸が苦しくなる。

 やめて。

 思い出したくない。

 

 「小春!」

 

 誰かが叫んだ。

 でも、体が動かない。

 また大きな音が響く。

 ドン!!

 

 「いや……!」

 

 私は思わず叫んでいた。

 その瞬間、目が覚めた。

 暗い部屋。

 静かな夜。

 夢だった。

 でも、心臓はまだ激しく動いている。

 息が苦しい。

 額に汗がにじんでいた。

 私は布団の中で体を丸める。

 まただ。

 最近、よく見る夢。

 あの日の記憶。

 全部は思い出せない。

 でも、大きな音と、怖かった感覚だけは消えない。

 時計を見る。

 まだ三時だった。

 窓の外は真っ暗だ。

 眠れそうにない。

 私はゆっくり起き上がる。

 机の上には、学校の教科書。

 その上にスマホが置いてある。

 画面が光った。

 通知が一つ来ていた。

 クラスのグループチャットだ。

 文化祭の話が少し盛り上がっている。

 私は少しだけ画面を見て、スマホを置いた。

 そのとき。

 ふと、昼間のことを思い出す。

 

 「保健室、行く?」

 

 蒼真の声。

 どうしてあんなことを言ったんだろう。

 私、そんなにわかりやすかったのかな。

 みんなには気づかれていないのに。

 ベッドに戻る。

 窓の外を見ると、少しだけ空が明るくなり始めていた。

 朝が来る。

 また学校が始まる。

 蒼真に会う。

 そのとき。

 ふと思った。

 あの人は、どうしてあんな目をしていたんだろう。

 まるで——

 私と同じものを見たことがあるみたいに。

 そんなことを考えているうちに、
 少しだけ眠気が戻ってきた。

 私はゆっくり目を閉じる。

 今度は、夢を見ませんように。

 そう願いながら。