「ふぉおおお! 逃がすか~~食材ぃいいい!!」
夜の森におっさんの叫び声が響く。
その直後、バサァッと巨大な影が月明かりを遮った。
ナイトコカトリス―――巨大な鳥の怪物、竜種の一歩手前とも言われるS級魔物。
先ほどロメリーの発動した光魔法にビックリしたのか、でっかい翼を広げて飛び立ちやがった。
「―――キュエエエ!!」
混乱しているのか、それとも興奮しているのかはわからん。
ぶっちゃけ、そんなことは俺にとっては重要ではない。そして、決まっていることがある。
―――上物の食材を逃がすとか、そんなもったいないことはできん!!
巨大な鳥竜は、この場を離れるわけでもなく大きく弧を描くように旋回を続けている。
俺は空を飛ぶことができない。当たり前なんだが。
そして魔法であいつを撃ち落とすこともできない。魔法を使えないからな。
てことで……
のぼる!
俺は近くにある木をひょいひょいと登って行く。
木登りが得意ってわけでもないが、かつて世界を旅するなかで木に登る場面はけっこうあった。
獄炎鳥のたまごを取りに行ったり、世界樹っていうどでかい大木をのぼったこともある。全部食材の為だったが。
なので、まあこの程度はなんとかなるっと―――
瞬く間に木のてっぺんについた俺は、サイドポーチから一丁の出刃包丁を取り出した。
「お~~い、こっちだ肉ぅう~~!!」
包丁をわざと大振りしつつ叫び声をあげた。振った包丁が月光りに反射してキラキラと輝きを反射する。
「キュアァアア!」
お、きたきた。
俺を見つけたようで、こちらへ急速に接近してくるナイトコカトリス。
こいつはそこまで飛ぶのが得意じゃない。そして俺もこんな不安定な場所では狩りをしたくない。
だから決着は、地上でつける!
俺は木のてっぺんから、グッと全身に力をめぐらせジャンプして……
「―――ふんっ! 出刃一閃っ!!」
迫りくるナイトコカトリスとすれ違いざまに、包丁の一撃を喰らわせる。
浅いな……
やっぱ、上じゃやりにくい。
ジャンプした俺はそのまま他の枝を蹴りながら、地表に降り立った。
「―――キュエエエエ!」
木々がざわざわと揺れ、風が渦巻く。
ナイトコカトリスも地面に降り立ち、俺と正面から向かい合った。
体躯は人の数倍、黒い鱗の下に隠れた筋肉と脂が均等についたであろう胸板。
でかい翼にも肉がいっぱいついてる。
「……これは良い肉だな」
俺は思わず口元がゆるんだ。
ぐにゃり、とナイトコカトリスの目が揺れる。
殺意がどんどん増していくのを感じる。その視線のさきには俺。
「ギュェエエエ!」
ナイトコカトリスが、すさまじい勢いで突進してきた。
周囲の木々がなぎ倒され土が跳ねる。
いいぞこの野生の力強さ! 肉がいかに洗練されているかがわかる!
さらに口元がゆるんだ。
俺はひょいとその突進を避ける。
パワーは相当なもんだが、ぶっちゃけ直進軌道なのでわかりやすい。
「キュエエエエ!」
体勢を立て直したナイトコカトリスが翼を大きく広げ、衝撃波を叩きつけてきた。
空気が砕けるような音。
木の幹がまとめて裂け、地面がえぐれる。
おお、この力強さ! やはり羽肉も相当な上物だぞ!
わくわく……
「柳刃包丁―――空間みじん切り!!
――――――ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ!!」
俺は柳刃包丁を超高速で振るい、衝撃波をみじん切りにした。
包丁圧による空気の分断だ。
「ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ!!」
空気を刻む風切り音だけが響き、衝撃波はただの風に戻って消えた。
「キュ……エ?」
困惑するな。
俺はずっと包丁を振るい続けているんだ。切れないものなどない。
「さて―――仕上げだ」
サイドマジックサイドポーチから、出刃包丁をもう一丁取り出す。
右手に出刃包丁、左手に出刃包丁。
二本だ。
出刃包丁二丁流―――
「ギュエエエエエ!」というけたたましい音とともに、ナイトコカトリスの大きな翼が再び開かれた。
また飛び立つ気か……だが。
俺は一気に距離を詰めて、2丁の出刃包丁を振るう。
「――――――ふんっ! 出刃二閃!!」
―――スパァアアンッ!!
ナイトコカトリスの両翼が空に舞った。
さて、これで飛んで逃げるは無理だぞ。
「ギュ……ギュギュアァアアアア!!」
次の瞬間、ナイトコカトリスは尻尾をしならせてきた。
蛇の頭のような尻尾が、カッと口を開く。
俺は即座にしなるような尻尾の攻撃を軽く飛んでいなしつつ、飛びざまに包丁を切りつける。
「ギャブゥウ!」
蛇の尻尾がストンと切り落とされた。
あとでこの尻尾は煮込むからな。お前の肉は一片も無駄にはせん。
「―――――ギュアアア!」
体勢を崩したナイトコカトリスが激怒の声をあげた。森がビリビリと震える。
やつのとさかが、どくんと脈打つ。
空気が止まり、殺意がグングン増していく。
じょじょに光を帯び始めるとさか。
石化の邪光か。
この光を浴びれば、肉も骨も魂の息吹すら石となる。
「―――来るよな。だと思った。」
俺は出刃包丁の表面をすっと撫でる。
「―――――ギュアアアアアアア!!」
ナイトコカトリスから放たれる石化の光。
俺を中心にすべてを終わらせようと迫りくる。
「―――出刃二丁反射」
俺は包丁の鏡面を高速で回転させて、巨大な円形反射鏡を作り出す。
石化の光が鏡に反射したように跳ね返され、森の周辺に散った。
包丁の鏡面仕上げ。
俺は毎日磨いてるからな。
ナイトコカトリスが目を見開く。
「わるいが、調理器具の整備は一切怠らん主義なんでな。」
「キュ、キュエエエエエエ!!!」
「おわりだぁ!――――――ふんっ! 出刃二閃!!」
―――スパァンッ!!!
ナイトコカトリスの首が、綺麗に落ちた。
◇◇◇
肉の熱がまだ残るうちに血抜きを終え、俺はレイナたちのもとへ戻る。
「おう、そっちも倒したか」
もう一体のナイトコカトリスの亡骸が、彼女たちのそばにあった。2人とも疲労困憊といった感じである。
が……
レイナは肩で息をしつつも、目はギラギラとしていた。
ロメリーはロメリーで、なんかまだ光が漏れている。もう光魔法は解除してもいいんじゃないか?
というか、2人とも……
「こらぁぁ!! 生でいこうとすな! 腹こわすぞ!!」
「……っは! あ、あたしなにを」
「ふはっ!? ワタクシなんで口をあけて……?」
野生の女剣士と野生の聖女が、はっと我に返った。
焦りすぎだよ。生でかぶりつこうとしちゃいかん。
しかるべき調理をしないと、どんなにいい食材でも不味いんだからな。が……まあ、俺も激うまと2人を焚きつけてしまったところはあるか。
「本来は食堂に戻るまでお預け! と言いたいところだが」
「「言いたいところだが!?」」
息ぴったりにハモるな、この2人。
まあいい。
「夜食いっとくか。ナイトコカトリスの焼き鳥だ。」
レイナとロメリーの顔が、今日いちの笑顔になった。
夜の森におっさんの叫び声が響く。
その直後、バサァッと巨大な影が月明かりを遮った。
ナイトコカトリス―――巨大な鳥の怪物、竜種の一歩手前とも言われるS級魔物。
先ほどロメリーの発動した光魔法にビックリしたのか、でっかい翼を広げて飛び立ちやがった。
「―――キュエエエ!!」
混乱しているのか、それとも興奮しているのかはわからん。
ぶっちゃけ、そんなことは俺にとっては重要ではない。そして、決まっていることがある。
―――上物の食材を逃がすとか、そんなもったいないことはできん!!
巨大な鳥竜は、この場を離れるわけでもなく大きく弧を描くように旋回を続けている。
俺は空を飛ぶことができない。当たり前なんだが。
そして魔法であいつを撃ち落とすこともできない。魔法を使えないからな。
てことで……
のぼる!
俺は近くにある木をひょいひょいと登って行く。
木登りが得意ってわけでもないが、かつて世界を旅するなかで木に登る場面はけっこうあった。
獄炎鳥のたまごを取りに行ったり、世界樹っていうどでかい大木をのぼったこともある。全部食材の為だったが。
なので、まあこの程度はなんとかなるっと―――
瞬く間に木のてっぺんについた俺は、サイドポーチから一丁の出刃包丁を取り出した。
「お~~い、こっちだ肉ぅう~~!!」
包丁をわざと大振りしつつ叫び声をあげた。振った包丁が月光りに反射してキラキラと輝きを反射する。
「キュアァアア!」
お、きたきた。
俺を見つけたようで、こちらへ急速に接近してくるナイトコカトリス。
こいつはそこまで飛ぶのが得意じゃない。そして俺もこんな不安定な場所では狩りをしたくない。
だから決着は、地上でつける!
俺は木のてっぺんから、グッと全身に力をめぐらせジャンプして……
「―――ふんっ! 出刃一閃っ!!」
迫りくるナイトコカトリスとすれ違いざまに、包丁の一撃を喰らわせる。
浅いな……
やっぱ、上じゃやりにくい。
ジャンプした俺はそのまま他の枝を蹴りながら、地表に降り立った。
「―――キュエエエエ!」
木々がざわざわと揺れ、風が渦巻く。
ナイトコカトリスも地面に降り立ち、俺と正面から向かい合った。
体躯は人の数倍、黒い鱗の下に隠れた筋肉と脂が均等についたであろう胸板。
でかい翼にも肉がいっぱいついてる。
「……これは良い肉だな」
俺は思わず口元がゆるんだ。
ぐにゃり、とナイトコカトリスの目が揺れる。
殺意がどんどん増していくのを感じる。その視線のさきには俺。
「ギュェエエエ!」
ナイトコカトリスが、すさまじい勢いで突進してきた。
周囲の木々がなぎ倒され土が跳ねる。
いいぞこの野生の力強さ! 肉がいかに洗練されているかがわかる!
さらに口元がゆるんだ。
俺はひょいとその突進を避ける。
パワーは相当なもんだが、ぶっちゃけ直進軌道なのでわかりやすい。
「キュエエエエ!」
体勢を立て直したナイトコカトリスが翼を大きく広げ、衝撃波を叩きつけてきた。
空気が砕けるような音。
木の幹がまとめて裂け、地面がえぐれる。
おお、この力強さ! やはり羽肉も相当な上物だぞ!
わくわく……
「柳刃包丁―――空間みじん切り!!
――――――ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ!!」
俺は柳刃包丁を超高速で振るい、衝撃波をみじん切りにした。
包丁圧による空気の分断だ。
「ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ!!」
空気を刻む風切り音だけが響き、衝撃波はただの風に戻って消えた。
「キュ……エ?」
困惑するな。
俺はずっと包丁を振るい続けているんだ。切れないものなどない。
「さて―――仕上げだ」
サイドマジックサイドポーチから、出刃包丁をもう一丁取り出す。
右手に出刃包丁、左手に出刃包丁。
二本だ。
出刃包丁二丁流―――
「ギュエエエエエ!」というけたたましい音とともに、ナイトコカトリスの大きな翼が再び開かれた。
また飛び立つ気か……だが。
俺は一気に距離を詰めて、2丁の出刃包丁を振るう。
「――――――ふんっ! 出刃二閃!!」
―――スパァアアンッ!!
ナイトコカトリスの両翼が空に舞った。
さて、これで飛んで逃げるは無理だぞ。
「ギュ……ギュギュアァアアアア!!」
次の瞬間、ナイトコカトリスは尻尾をしならせてきた。
蛇の頭のような尻尾が、カッと口を開く。
俺は即座にしなるような尻尾の攻撃を軽く飛んでいなしつつ、飛びざまに包丁を切りつける。
「ギャブゥウ!」
蛇の尻尾がストンと切り落とされた。
あとでこの尻尾は煮込むからな。お前の肉は一片も無駄にはせん。
「―――――ギュアアア!」
体勢を崩したナイトコカトリスが激怒の声をあげた。森がビリビリと震える。
やつのとさかが、どくんと脈打つ。
空気が止まり、殺意がグングン増していく。
じょじょに光を帯び始めるとさか。
石化の邪光か。
この光を浴びれば、肉も骨も魂の息吹すら石となる。
「―――来るよな。だと思った。」
俺は出刃包丁の表面をすっと撫でる。
「―――――ギュアアアアアアア!!」
ナイトコカトリスから放たれる石化の光。
俺を中心にすべてを終わらせようと迫りくる。
「―――出刃二丁反射」
俺は包丁の鏡面を高速で回転させて、巨大な円形反射鏡を作り出す。
石化の光が鏡に反射したように跳ね返され、森の周辺に散った。
包丁の鏡面仕上げ。
俺は毎日磨いてるからな。
ナイトコカトリスが目を見開く。
「わるいが、調理器具の整備は一切怠らん主義なんでな。」
「キュ、キュエエエエエエ!!!」
「おわりだぁ!――――――ふんっ! 出刃二閃!!」
―――スパァンッ!!!
ナイトコカトリスの首が、綺麗に落ちた。
◇◇◇
肉の熱がまだ残るうちに血抜きを終え、俺はレイナたちのもとへ戻る。
「おう、そっちも倒したか」
もう一体のナイトコカトリスの亡骸が、彼女たちのそばにあった。2人とも疲労困憊といった感じである。
が……
レイナは肩で息をしつつも、目はギラギラとしていた。
ロメリーはロメリーで、なんかまだ光が漏れている。もう光魔法は解除してもいいんじゃないか?
というか、2人とも……
「こらぁぁ!! 生でいこうとすな! 腹こわすぞ!!」
「……っは! あ、あたしなにを」
「ふはっ!? ワタクシなんで口をあけて……?」
野生の女剣士と野生の聖女が、はっと我に返った。
焦りすぎだよ。生でかぶりつこうとしちゃいかん。
しかるべき調理をしないと、どんなにいい食材でも不味いんだからな。が……まあ、俺も激うまと2人を焚きつけてしまったところはあるか。
「本来は食堂に戻るまでお預け! と言いたいところだが」
「「言いたいところだが!?」」
息ぴったりにハモるな、この2人。
まあいい。
「夜食いっとくか。ナイトコカトリスの焼き鳥だ。」
レイナとロメリーの顔が、今日いちの笑顔になった。

