「君はいらない」と言われたので出て行きました。今さら後悔してももう遅いです

それから数週間が過ぎた。

私は毎日店に通い、帳簿の整理を続けていた。

最初は数字がばらばらで、どこから手をつければいいのか分からない状態だった。

けれど一つ一つ確認していくと、問題点が見えてくる。

仕入れの無駄。
計算の間違い。
同じ商品の重複注文。

「これでは利益が出ないはずです」

私は帳簿を見ながら言った。

レオンハルトは腕を組んだまま、静かにうなずく。

「どうすればいい?」

「まず仕入れ先を整理します。それから売れ筋の商品を増やしましょう」

私は紙に簡単な計画を書き出した。

公爵家で屋敷を管理していた頃、こういう作業は何度もしてきた。

けれど、こんなふうに誰かと相談しながら仕事をするのは初めてだった。

数日後。

店の品揃えは少しずつ変わっていった。

すると客の様子も変わり始める。

「この店、前より買いやすくなったな」

「新しい商品も増えてる」

そんな声が聞こえてくる。

私はレジの横で帳簿をつけながら、少し驚いていた。

自分の考えた方法が、こんなにうまくいくなんて。

その日の夜。

レオンハルトが帳簿を見ながら言った。

「利益が三割増えている」

「え?」

思わず顔を上げる。

「そんなにですか?」

「君が来てからだ」

彼は静かに言った。

「……助かっている」

その言葉に、胸の奥が温かくなる。

公爵家では、誰もそんなことを言ってくれなかった。

私は小さく微笑む。

「まだ改善できるところはあります」

レオンハルトは少し驚いたように笑った。

「頼もしいな」

そのとき私は思った。

ここなら――

私は自分らしく生きていけるかもしれない。