チョコレートに想いを込めた春、君が消えた

 教室に戻る気になれない。保健室か中庭、それか屋上にでも行くか。

「……ん?」

 廊下の窓から校庭を見ていたら、何かが見えた。体育をしている奴らがいないか見てから、校庭に行く。体育館倉庫のそばに、バレーボールが置いてある。

「なんで……は?」

 ボールが入ったネットに、キーホルダーがついている。俺が和哉にあげた、お揃いのやつ。

 バレーボールなんて、和哉は部活の時しか持っていない。鞄に入っていたのが落ちた? 校庭に?

 バレーは体育館でやっているはずだ。それなのにここはおかしいだろ。

「誰かが呼び出した?」

 声が震えてしまう。そんなことないよな、さすがに。だって和哉はみんなに慕われていた。

 違うのか? 


『留喜、助けて』

死に際の連絡を思い出す。これはただの事件じゃない。持っていたスマホを落としてしまう。パリンとガラスカバーが割れた。あ、片付けないと。

「いたっ」

 ガラスで指が切れて血が流れてしまう。和哉は、これと比べ物にならないほど痛かったのか……?

 バレーボールを握りしめる。許せねぇ。絶対に地獄に落とす。

「留喜? 戻ってこないと思ったら……」

 体操服を着た奏がそばに来る。

「奏、あいつ、何かあったかも」

「え、マジかよ」

 目を見開いて、奏はバレーボールを触る。手が震えている。顔が青い。

「わかんない。でも」

「る、留喜腕! 保健室行くぞ」

 奏が俺の腕をじっと見つめる。怪我をしていない方の手を掴んで、奏は連れて行ってくれる。

「奏、和哉を殺した人が、学校にいるかも」

 何も言わないで、奏は歩き続ける。保健室の前で、奏は足を止めた。

「不審者かもよ。でも、留喜の推測の方が正しい、きっと」

 殺し屋や殺人鬼の方がまだよかった。知り合いなんて最悪すぎる。

 でも、目を背けたらダメだ。

「奏、俺は真実が知りたい」

「俺もだ、暴こうぜ。殺されるかもな」

 手をぎゅっと握ってくれる。握り返した。

「上等だ、和哉のためならなんでもする」

 じっと奏は俺を見つめる。

「上等じゃねぇ、死ぬのはナシだ」

 瞬きする。そっか。もう一度目を合わせてから、俺は保健室のドアを開ける。

 和哉を殺したことを悔やんで悔やんで死んでいけ。神様にも嫌われて、恨まれて。


傷の手当てをして、奏とラインを交換してから、俺は教室に戻った。

 バレーボールをそっと鞄にしまう。和哉の親に渡さないと。

 真実なんて、知らない方が良いのかもしれない。でももう、俺達は閉ざされた扉を開いてしまった。