春、君が消えて、アイツに惹かれた


 目を開けると、母さんが俺の髪を指ですいていた。

 花火が終わったら寝ちゃったのか。

「ん? 母さん、寿司は?」
 
 起き上がって、軽くあたりを見る。もうすっかり夜だ。月が出ている。

「もう届いた。今お父さんお風呂だから、出たら食べようね」

「うん。見てきていい?」
  
 窓のそばから離れて、ダイニングに行こうとする。

「その前に靴を戻そうね」

「はーい」

 慌てて靴を履いて、玄関に行く。

 ダイニングの中央にあるちゃぶ台に、寿司があった。まぐろにさーもんに、いかにたまごにあなご。あ、いくらもある。

「ウサギだ」

 おいなりさんは中央にいくらが二つと、耳を模した半円のキュウリがあって、ウサギの形になっている。かわいい。

 ガスコンロが付く音がする。顔を上げてキッチンを見る。母さんがウインナーを焼いている。そういうのなら、俺でも焼けるかな。簡単だし。

「タコ食べる」
 
 母さんの隣に行って、赤いタコさんウインナーをつまみ食いする。

「こら!」

 また母さんの声が響く。慌ててダイニングに戻って、俺はウインナーを呑み込む。

「随分騒がしいな」

 すすすっと、お風呂場から戻ってきた父さんの後ろに隠れる。

「お父さん、どいて」
 
 母さんが俺を追いかけてくる。

「え、どうしたんだ」

「留喜さっきからふざけてばっかりなの」

「へへ」

 笑いながら母さんを見る。

「かわいい」

 母さんが俺を見て呟く。

「お母さん、ちゃんと叱らないとダメだぞ」

「わかってるけど!」

「父さん、母さん、寿司食べよ?」

 二人を見ながら言う。

「はあ。そうね。テレビもつけてね」

 二人の肩を押して、俺はキッチンに行く。寿司は魚が新鮮で、どれも美味しかった。

「明日は何しよう」なんて考えながら、じゃがりこを食べながらテレビを見る。畳みに寝っ転がっていると、父さんが隣に来る。

「和哉くん以外に、友達はできたか?」

「うん。バスケ部の奏。優しくてバスケ上手いんだ。ダンク決められるんだよ」

 父さんは目を見開く。

「それはすごい! 今度羅喜も連れて、試合応援しに行くか」

「うん、伝えてみるね」
 
 みんなで行ったらすごく楽しそうだな。