チョコレートに想いを込めた春、君が消えた

 手を振り解いてしまう。

「嫌だ。俺の髪を撫でるのはいつも……」

 和哉なんだよ。

「そうか、悪かった」

「保健室行きます」

 教室とは逆の方向にある、そこに向かう。先生は何も言わず教室の方へ行く。

「うっ」

 堪え切れなくて、男子トイレでものを吐いた。気持ち悪すぎる。

 ださいなぁ、本当に。嫌だって、心配してるだけだろ。

 水欲しい。でも立つのしんどい。壁に手を当てて起きて吐瀉物を流す。


 世界なんて滅亡すればいい。お前がいないなら、いっそ。

 会いてぇよ、バカ。

 中庭の自販機までどうにか歩く。

『なぁルル、コーラ飲まねぇの? いつも水ばっか』

『炭酸嫌いなんだよ』

 ふと思い出して、思わずコーラのボタンを押す。

『めっず! 人生損してね』

あの時は、大袈裟だろと笑ったな。

 蓋を開けて飲んだ。炭酸に喉と舌がやられる、苦い。

「ゴホゴホ!」

 辛さもきた。飲めたもんじゃねぇ。毎日和哉は飲んでいたのに。

「はぁはぁ」

 蓋を閉めて中庭に座り込む。疲れた。

 なんで俺、こんなことしてんだ。思い出ばっか振り返って馬鹿じゃねぇの。


 ポケットからスマホを取り出して、電源をつける。つけないべきだった。待ち受けの和哉とのツーショット写真を見てしまう。笑っていた、俺と腕を組んで。

 白い肌は儚くて、垂れた瞳が可愛らしい。胸が締め付けられる。

「生きろよバカっ」

 涙が止まらない。両手で拭っていたら、足音が聞こえた。

 誰か来る。恥ずかしくなって、膝で顔を隠す。

 ふわっと、頭にブランケットをかけてくれる。涙を拭って、ブランケットから顔を出す。

「あ。小暮?」

 和哉と仲良かったよな。

「おう。話したことあんまないよな、俺らは」

 頷いていたら、小暮が隣に来る。

「あれ、炭酸嫌いだよな? 和哉が言ってた」

「うん。あいつコーラ好きだったから、つい。やるよ」

 八重歯を出して笑ってから、小暮は受け取る。チョコレート色の髪は甘ったるい匂いがして、唇はアプリコット色。肌はほどよく焼けている。

 運動部だっけ。去年までクラス違ったし、和哉と小暮が一緒にいる時にしか話したことないから、覚えていない。

「ありがと。バレー部、活動停止だって」

 和哉が入っていたからか。

「そっか。……はぁ。教室行かなくていいのか」

 ため息しか出ない。

「いい、だるいし」

 俺の肩に頭を預けて小暮は目を閉じる。十秒も経たないうちに、すーすーと寝息が聞こえる。寝るの早くね。

「かず……和哉ぁ」

寝言を聞いてしまった。

 会いたいよな。