春、君が消えて、アイツに惹かれた


 なんてことをしてしまったんだ、俺は。
 うあああ。穴があったら入りたい。どんな顔して学校に行けばいいんだよ。髪をぐしゃぐしゃにしてしまう。
『留喜、今日学校来れる? 話したいことあって』と、奏から不意に連絡が来る。
「いまいち。近くの公園で会うんでいい?」と連絡して、支度をする。

 お昼ごろに、昨日、俺がいた公園に行った。
 ブランコにいる奏が手を振っている。

「ありがと、来てくれて」
 奏の隣に座って、俺は首をかしげる。
「どうかした?」
「ウサギ小屋の鍵、久遠が持ってて。だから昨日、泉が久遠の鞄の中調べてくれたんだけど、そん時に折り畳み式の紺のリュックが見つかって」
 え。まさかそれって。

「奏を閉じ込めた時の?」
「ああ。証拠があったからさすがに自白して、三人は退学。修一と秀樹もやっぱトイレで待機はしてたって」
 じゃああとわからないのは、和哉殺しの犯人だけか。

「そっか。……誰が和哉殺したんだ」
 バレー部の奴とは仲がよかったはずなんだよな。

 奏のことは明らかになったのに、和哉のことと俺が料理部に戻れる方法はわからないままだ。でもそろそろ、専門学校の見学に行かないと。
 ――料理ができないのに? ドキリと心臓が音を立てる。

「留喜、制服は本当に捨てていいんだよな」
「うん。そのうち採寸し直す。届くまでは、飯田先生が渡してくれたの着ていいって言われた」

 膝枕の光景が頭に過る。顔が熱くなった。
「留喜、真っ赤だけど」
「え、あ……なんか熱いかも! もう帰ろうかな」
 大嘘だ。

「いや今雨だけど。全然熱くない」
 最悪、墓穴掘った。
「とにかく帰る!」
 立ち上がって、俺は公園を出る。

 家に着いた。キッチンに行って、ココアを作る。こういうことはできるのに。ケースから卵を取って、冷蔵庫を閉める。手が震えて、卵を落としそうになる。深呼吸をしてから、冷蔵庫を開けて元の場所に戻す。全然治っていない。
 でも決めないと、指定校推薦で行くところを。

 大学に行こうかな。そうすれば、料理がずっとできなくても生きていける。いやそうじゃない。できるようになるって信じないと。でもそれ、根拠ないんだよな。

 自分の部屋から薬を持ってきて、飲んだ。飲めば震えは治まる。でも料理ができないのは変わんない。薬って何かを治すものなんだから、それも治ればいいのに。いやそんな都合がいいわけない。

 一体どうしたらいいんだ。

 もう進学やめて働こうかな。一・二年くらいそうして治ってから専門学校に行ってもそんな問題ないよな。治らなかったら専門学校に行かないで働き続ければいい。
 行かないって、なんで夢から逃げるみたいな選択肢が浮かぶんだよ。料理人になりたいんじゃないのか。

 いっそ手がなければ、こんなに悩むこともないのに。